目次
『春分の日』は3月半ばの祝日というだけでなく、春のお彼岸に関わる大きな意味を持っています。さまざまな伝統行事も行われており、お墓参りや断捨離にも適した時期です。秋分の日のように、年によって変化する祝日でもあります。
本来、春分の日とはこんな日
春分の日を単なる祝日と考えている人も多いですが、国民の祝日にはそれぞれ意味があります。特に、春分の日はお彼岸とも関わりが深く、先祖への感謝を捧げる特別な日です。
「春分の日」にはどんな意味がある?今さら聞けない起源、由来、過ごし方
生物をいつくしむ、先祖に感謝をする
現在の春分の日は『生物をいつくしむ日』として定められています。
もともとは『春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい)』と呼ばれ、天皇や皇室に関わる霊を祭るために祝日として制定されたものです。
戦後1948年に公布された『国民の休日に関する法律』の際に春分の日と名称が変わりましたが、現在でも春季皇霊祭は行われています。
祝詞(のりと)を読み上げて、先祖の霊に捧げる飲食物や供物などを備える儀式です。宮中での祭典と同じように、国民の間でも自らの先祖に感謝を捧げる日として認識されています。
お墓参りをして過ごす家庭も多いでしょう。
二十四節気にあたり春の訪れを感じる日
春分は『二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、花や草が育ち春らしさを感じる時期です。二十四節気は古代中国の暦で、季節を暦の指標にしています。
二十四節気をさらに詳細に分けた『七十二候(しちじゅうにこう)』の10番目にあたる『雀始巣』も、春分の時期と重なる3月21日頃です。
読み方は『すずめはじめてすくう』で、雀が巣を作り始める様子を示します。春分の頃になると、雀が繁殖のために個別に巣を作るようになる様子を表した名前です。
地域によって気温は異なりますが、3月下旬は一気に気温が上がる傾向です。東京都内の平均気温は14℃ほどで、最高気温が20℃を超える日も出てきます。
春分の日はいつ?
春分の日は何月何日と正確に決まっているわけではありません。しかし、毎年同じ日が続くケースもあり、変わると認識していない人もいます。ある程度は、計算で導き出すことも可能です。
秋分の日と同様、毎年同じ日とは限らない
春分は『太陽が春分点を通る瞬間』を表しています。地球を大きな球体で包んだとき、球体を上下に分けるように真ん中にぐるっと横線を描いた位置が赤道です。
黄道(こうどう)と呼ばれる『太陽の通り道が赤道と交わる場所』に『春分点(しゅんぶんてん)』があります。
太陽の通り道は季節ごとに南北へ移動しますが、春分点があるのはちょうど地球を縦半分に割った位置です。春分は『太陽が地球のちょうど真ん中を通る瞬間』を指します。
太陽は約1年で同じ場所に戻ってきますが、365日ちょうどではありません。毎年6時間ほどの遅れがあり、春分の瞬間も数時間ほど変わります。
春分の日付が年によって違うことがあるのは『春分点を通過する時間が異なるため』です。この遅れは、4年に1度の『うるう年』によってリセットされます。
計算して予測することは可能か
将来の春分の日を知るには、計算である程度予測が立てられます。しかし、計算で出した春分の日は、あくまでも現在と同じように地球が公転していると仮定した場合です。
地球の動きは、ちょっとしたことで変化します。たとえば氷河期などは、地球の動きが少しずれたことで起こったものです。
将来の地球の動きは予測ができません。数万年単位で考えると、少しずつ1日の長さは長くなっています。
突然大きな変化があるとは考えにくいですが、あくまでも正式決定は『暦要項』に記載されたときと考えておきましょう。
暦要項は『国立天文台』が試算した翌年の暦が載っているもので、毎年2月に発表されます。
国民の祝日で休みになる会社が多い
国民の祝日は、日曜日と同じく体を休める日です。業種によっては難しいですが、土日を休日と定めている会社であれば祝日も休みとしているところが多いでしょう。
行政や郵便などは、国民の祝日を休日と定めています。一般の会社でも『国民の祝日は休日』と認識されていますが、強制ではありません。
『労働基準法』第35条では「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない」と定められていますが、曜日は会社が自由に決められます。
固定の必要もありません。国民の祝日を休日出勤扱いではなく、通常の出勤日として定めるかどうかは会社の自由です。
なぜ墓参りをするようになったのか
春分の日にお墓参りをするのは、先祖に感謝を捧げるための日として認識されているためです。
もともと春分の日は皇室の霊を祀る皇霊祭でもあり、国民もそれぞれの先祖に感謝を捧げています。仏教の教えや、お彼岸もお墓参りをする理由の一つです。
お彼岸との関係
春分の日を中日として、前後3日間を足した7日間が『春のお彼岸』と呼ばれます。春分の日は、日が沈むまでと沈んでからの時間がほぼ同じです。
夏は日が長く、冬は短くなりますが、春分の日は『ちょうど真ん中』あたりに位置しています。仏教では、釈迦如来の『中道(ちゅうどう)』という教えが有名です。
釈迦如来の説く中道は、快楽や禁欲など『どちらかに偏らない中間』を意味します。この教えに、偏りがない春分の日を重ね合わせて『この世が彼岸に最も近づく日』と考えられているのです。
また、春分の日には太陽が真西に沈み、極楽浄土への道を連想させます。亡くなった人が向かう彼岸があるのは『西方』であるためです。
「お彼岸」っていつからいつまで?意外と知らないお彼岸の時期にすべきこと
ぼた餅をお供えする理由
春のお彼岸には、ぼた餅がお供えされるのが一般的です。ぼた餅の名前は花の『牡丹(ぼたん)』からきており、大きな丸い形を模しています。
ぼた餅をお墓に供える理由は、さまざまです。一般的には『小豆の赤色による魔除けの効果』と『貴重品である砂糖を先祖を敬う気持ちで使用した』というものがあります。
小豆ともち米を合わせたお菓子は「先祖と自分たちの心を合わせてつなげるもの」として考えられていました。
一方で、秋には『萩(はぎ)』の花からおはぎが主流です。やや小さめの俵型で作ります。
ぼた餅とおはぎは似たような食べ物ですが、ぼた餅には『こしあん』が使われるのが特徴です。
小豆の収穫期は秋であることから「保存しておいた小豆でぼた餅を作る際に硬い皮が残らないように」との心配りゆえとされています。
山菜など色どりのよい旬の食材を食べよう
春分の日は『生物をいつくしむ日』です。仏教でも節目の意味がある春分の日には、肉や魚を使わない精進料理を食べます。
亡くなった人に精進料理を供え、下げたものをいただく意味もあり仏教の教えを学べるよい機会です。
仏教では、お彼岸に悟りを開くための修行をして過ごします。『六波羅蜜(ろくはらみつ)』と呼ばれ、釈迦如来が悟りに至るまでに行ったとされる六つの修行です。
精進料理も『精進』の修行の一環とされています。春らしいたけのこ・ふき・菜の花などの山菜や、色が美しい油揚げやかぼちゃなどを使えば季節感も楽しめるでしょう。