真空管はムラードの「12AX7」と「12AU7」を用意した。双三極管の内部の特性がマッチしており、さらに3本のペアマッチも取れてたものを使用。
『SV-Pre1616D』は何と整流管に「274B」対応。ということで『WE274B』が使える。
背面はトランス放熱用のスリットにDAC用のUSB mini端子が見える。その下に入力4系統。ライン入力とUSB入力の切り換えスイッチなどが並ぶ。
真空アンプとしては珍しく3個のツマミが並ぶ。プリアンプならではの光景だ。ボリュームがやや軽すぎるきらいはあるが、バランスのセンターのクリック感は絶妙だ。
真空管を挿した状態で裏返して、もう一度配線を確認したら、電源を入れて電圧測定をおこなう。軍手かゴム手袋着用でテスターの赤棒は先端以外カバーしてショートに注意。
■Impression
初の真空管プリアンプキット製作。電源回路以外はディスクリートなので、回路図を見なくても作っていくと部品の役割と電気の流れが良く分かる。基板だとさっぱり分からないが、手配線すると、ヒーターとアース、プレート、カソードと順を追って配線する。これで双三極管の役目も見えてくる。配線の枝ぶりに関しても、見た目で部品の位置を揃えた方がいいのか、それとも部品の脚の長さを揃えた方が音質的に有利なのか、悩んでしまう。さらに配線の引き回しでノイズが出やすくなるかもしれないし。幸い、今回は残留ノイズもなく配線も間違えていなかった。測定してから音を出したら、まさかの右チャンネルから音が出なかった。テスターでチェックすると、出力のシールド線のホット側のイモハンダが原因で、末端処理をやり直して無事問題解決。
音質に関しては次回の球転がし編でレポートするが、今回は使っている真空管が比較的安価なので、気軽に差し替えが楽しめる。しかも3本全部なく、1本交換するだけでも音質の変化がある。高さ約13.5cmなので無理なくデスクトップに置ける。整流管に「5AR4」を使えばヒーターが赤く点灯して、本物の真空管のともしびを満喫できる。トランジスタのパワーアンプと組み合わせで独特の響きと厚みのある真空管サウンドがすぐに実現できる。これはハイコスパなプリアンプである。真空管アンプは初めての方にもオススメ。手元にパワーアンプかアクティブスピーカーがあれば、真空管パワーアンプよりも先に『SV-Pre1616D』を作ってもいいと思う。
すでに真空管パワーアンプを持っている人なら、ライン入力で使っていて、パワーアンプにもボリュームあるからプリいらないよね、と思うだろう。私もそう思った。しかし、真空管プリアンプを通すと、さらに真空管らしさが倍増、やはり真空管パワーアンプには真空管プリアンプが必要なことを実感した。
写真・文/ゴン川野
オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンドレコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入は全てオーディオに注ぎ込んだ。PC Audio Labもよろしく!