正当な要求か不当な要求かの分岐点を決めて対応を変える
援川氏は、クレーム対応の流れをスキーのジャンプに例えている。まず、初期対応は「低姿勢」だ。
「どんなに顔が怖くても、プロのクレーマーらしくても、お客様はお客様。低い姿勢で、先入観を持たずにていねいに対応します」(援川氏)
次は、足が付かないグレーゾーンの「見極め段階」だ。相手の感情が不安定で対応が難しく、相手がどんな人物なのか、何を要求しているのか分からないから不安だ。
「最近のクレーマー対応はこの段階が多い。事実や要求を把握し、見極める作業が必要ですが、まだ相手はお客様として対応します」(援川氏)
これだけは譲れないという「K点」を超えた場合は、不当な要求として対応を変える。だから、このK点をどこにするか決めておくことが大切だ。納得してくれないお客に対しては理論武装も必要となる。
「『納得してもらえないのは残念ですが、そこまでの対応はできません』『お気持ちはわかりますが、そこまでの対応はできません。どうぞご理解ください』『ご寛容ください』といいます。もちろん相手は、理解できない、納得できないといってきますが、それでも『今すぐ対応はできません、どうかご理解ください』と、冷静に、淡々と伝えるようにします」(援川氏)
スピーディに対応しなくてはいけないが、スピード解決は禁物だ。
また、「お詫び」と「謝罪」は違う。間違いを認めたことになるので謝らない方がいい、という認識が広まっているが、初期対応のまずさに対する「お詫び」と、本当のミスに対する「謝罪」を使い分ければいいと援川氏はアドバイスする。
「『不快な思いをさせて申し訳ありません』『お手間をとらせて申し訳ありません』といった、与えてしまった不快な思い、不満、手間をとらせてしまったことに対して、ピンポイントに狙いを定めてお詫びをするのです。謝ったからミスを認めたことにはなりません」(援川氏)