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【Kazuquoママの銀座の夜話】第三の開拓「北海道ルネサンス」が千歳から始まる日

2026.10.11

■連載「Kazuquoママの銀座の夜話」

千歳の人々は空と共に生きる道を選んだ

私が千歳活動を始めて早5年目の令和8年。新千歳空港が100年を迎えました。100年ですよ!100年。人間だったら、長寿のお祝いです!千歳の空港の始まりは1926年(大正15年)。小樽新聞社の飛行機が、千歳村に着陸することになり、当時の千歳村の人たちが、原野に自分たちの手で着陸場を造ることになった。重機もない時代に、たった数日で、手作業で整地し、そこへ飛行機が着陸した。その一本の着陸場が、100年後、年間何千万人もの人が行き交う北海道の玄関口になっている。

これってすごい史実じゃないかしら。まさに、北海道のフロンティアスピリッツですよね。今みたいに、何かあったらすぐに『どこかに委託しましょう』『専門業社にお願いしましょう』『実績のある会社にプロポーザルを』なんて時代じゃない100年前に、先人たちは、突然、飛行機が飛んで来るから、着陸場をつくらなきゃ!と、皆で立ち上がり、造ってしまったのだから。そんな空港の100周年って、なかなかないことでしょ。その特別な100周年を祝うコンテンツは何か、以前からずっと、とても楽しみにしていた私です。

借り物の輝きに託すメインイベント

メインイベントとして、市民団体、自衛隊、航空関係、警察などが出演する100周年記念 パレードが行われました。どれも素晴らしいパフォーマンスでしたが、主役となったの は、ディズニーパレードだった。しかも、東京ディズニーシー25周年記念のパッケージパ レートを配置していた。私は思わず『なんで?』と言葉を漏らしてしまった。誤解しないでほしい。私はディズニーが嫌いなわけではありません。ミッキーに罪はないですし、この日のために、準備に奔走された関係者の方々の労力も推し量れます。子どもたちが喜ぶのもわかる。沿道に人が集まり、街が盛り上がるのもいいことです。パレードに参加するパフォーマーの人々もたくさんの人に観てもらえますしね。でも、100年に一度のその日に、私たちが誇るべき主役をミッキーたちがさらっていく。なんとも言えない違和感を感じてしまいました。

地方自治体によく見る評価軸

なぜ、自分たちの街にこんなに素晴らしい物語があるのに、最後の最後で『有名な誰か』 に主役を渡してしまうのでしょう。市長のインスタもディズニーパレードがメインでアップされているので、自治体もディズニーパレードに相当な思いだったことがうかがえます。地方へ行くとよくあることかもしれません。町おこしだから有名タレントを呼ぼう。周年事業だから有名歌手を呼ぼう。人が集まらないから人気キャラクターを呼ぼう。屋台を並べてストリートフード祭り。自治体が有名なものが好きなのには、理由があると思います。単純にセンスの問題じゃなくて行政の仕組みそのものが『失敗しにくく、成果を説明 しやすい企画が好きだから』じゃないかと私は思っています。

自治体のイベントには、税金が使われます。すると終了後に『何人来たか』『経済効果は』 『メディアにどれだけ取り上げられたか』みたいな、数字で説明できる成果が必要なんです。もちろん、それ自体が悪いわけではない。でも私はいつも思う。『あなたたちの町には何もないの?』と。あるでしょう。むしろ、いっぱいある!今回の100周年なら、原野を切り拓いた人たちがいる。空港とともに生きてきた人がいる。自衛隊がある。航空会社がある。空港で働いてきたたくさんの人たちがいる。飛行機を見上げながら育った子どもたちがいる。戦争もあった。別れもあった。再会もあった。空港という場所には、100年分の多くの人の人生が積み重なっているのです。

安直だけど、その100年をモチーフにプロと市民合作でショートムービーを撮るなんてことでもよかったのでは?なんて思うの。今や世界配信もできちゃうご時世ですし。だけど自治体は、未来の成果なんて、時間もかかるし、数値で表せないから、そういったことに税金を使うのが苦手。新たなことや独自な物やコトを生み出すことができない自治体が多い。それを指南する議員も少ないのが現状。銀座で店をやっていても、同じことを感じます。高いワインを並べればとか、有名デザイナーに内装をとか、有名な料理人を呼べばなど 素晴らしい物だけを揃えてもいい店になるわけじゃない。

誰かが価値を決めたものを並べるのは簡単。ロマネ・コンティだから素晴らしい。有名 シェフだから美味しい。今回のディズニーもみんなが喜ぶし、盛り上がる。それは考えているようで、実はあまり考えていない。むしろ思考停止状態といっても過言ではない。すでに世の中が価値を保証してくれているものを選んでいるだけなんだもの。本当に難しいのは、まだ誰も価値をつけていないものを見つけること、生み出すこと。そこに光を当て『これは残す価値がある』という見方をするかどうか。言い換えれば『地域を編集する力』があるかどうかだと私は考えます。

『地方創生』って?

地方創生という言葉を私はあまり信用していません。今回みたいに大きなイベントをや ることが地方創生ではない。地方創生は、こういった打ち上げ花火的なものが多い。そのイベントが終わった翌朝、『その町に何が残ったのか?』『市民はどう変わったのか?』私はそちらのほうが気になる。ミッキーはパレードが終われば帰ってしまう。しかも、そのミッキーたちは、他の町でも同じことをするのだ。決して千歳市だけのものではない。

それは、ディズニーの商売だから仕方がない。千歳の人にはしばらくの間『楽しかったね』とか『ディズニーすごかったね!』というコメントが飛び交うだろうけど、1週間もすれば、ほとんとの人が口にしなくなる。だから100周年で本当に残すべきだったものは、人気キャラクターとの記念写真だけではなく、『この町にはこんな物語があったんだ』という市民自身の発見、歴史を知りたいという好奇心を触発して、千歳市民であることを誇りに思う。いつでも見返せたり、他者に布教できる『お守り』みたいなものだったのではないだろうか。

一番記憶に残るものは?

千歳から銀座へ戻るある日。新千歳空港の本屋で一冊の本が目に止まり、衝動買い。北海道新聞社が発行した、相原秀起さんの『新千歳空港100年』。 離陸して、北海道の大地がだんだん小さくなっていくのを、窓から眺めながら、ページをめくった。 そこに書かれていたのは、単なる『空港の歴史』ではなかった。まだ飛行機が特別な乗り物だった時代に、千歳の空の未来を拓いた人たちがいた。その思いを受け継ぎ、繋いで、広げてきた人たちの物語だった。たくさんの貴重な写真、時を超えたたくさんの人へのインタビュー。千歳市にとって、切っても切り離せない重要なシンボル『新千歳空港』を、相原さんや北海道新聞社さんは、それを『本』という形で市民、道民、国民の共有財産として残してくださった。

この本を読んだ千歳市民、自治体職員、議会議員がどれほどいるのかは甚だ疑問だけれども、他にも千歳市民が手がける『文の見た空』というミュージカル公演もありました。千歳空港の歴史をテーマにした市民参加型の郷土史劇ですが、ちゃんと100年を語る物語があるのです。今回、空港の100周年を祝うのに、一番記憶に残ったのは『ディズニーが来た』とならないだろうか? 私はここが大切だと思うのです。『形に残す』ということ。人の記憶って薄れていくし、 口伝承も時が経つと、歪んで消えていく。 私は、外から何かを持ってくることを否定しているのではありません。私自身、東京と北海道を行ったり来たりし、海外にも出る。だからこそ思います。

外へ行けば行くほど、最後に問われるのは『それであなたの街や暮らしには何があるの?』 なのだと思います。その問いに自分の言葉で答えられる自治体は強い。答えられない自治体ほど、有名人、有名ブランド、有名キャラクターを借りてくる。確かに有名な借り物の輝きは強い。でも、借り物はいつか返さなければならない。だったら、自分たちで時間やコストをかけて創り、残して、未来へ繋がないといけないのではないか。ミッキーを呼ぶより、ずっと大変だけれど、たぶんその面倒くささの中からしか生まれないものが『文化』になるのだと思います。

北海道『ルネサンス』

北海道の歴史を考えるとき、私は『すごい!』と思う。わずか150年余りで、この広大な 大地をここまでにしたのだから。しかし、厳しい冬がある北海道の開拓は、相当過酷であったと聞きます。何よりもまず『生き抜く』ことが最優先。食べる、働く、家族を守る、産業を興す。文化だ、美意識だ、街の記憶だという前に『サバイブ』することが最優先だった。一方、内地には縄文時代から何百年、場所によっては1000年以上という時間の中で、積み重ねられたきた文化がある。

古い寺社が残り、古文書が残り、祭りが残り、街並みが残る。何代にも渡って受け継がれた工芸があり、土地ごとの風習がある。そこには、『昔からそうしてきた』ということや モノが幾重にも重なっている。北海道はその『様々な蓄積』が圧倒的に少ない。もちろん、アイヌ民族が育んできた長い歴史と文化がある。それを忘れて『北海道の歴史は150年』と言ってしまってはいけません。

私が言いたいのは、明治以降に作られてきた現代の北海道の都市や産業の歴史がまだ150年余りしかないということ。古文書を残すことより、明日の食料。美しい建物を造ることよりも冬を越せる家。文化を語ることよりも道を造り、畑を拓き、産業を創ること。決して文化を軽んじたのではない。文化に意識を向ける余裕すらないほど、生きることに必死だったと私は想像する。 北海道には世界が愛する『自然』がある。素晴らしい『食材』がある。広大な土地、そして、世界からの玄関口『新千歳空港』がある。

これだけの素材を持ちながら、北海道の価値を『自然がきれい』『食べ物が美味しい』だけで終わらせてはもったいないじゃない? 『文化』とは、北海道にすでに存在する資源に、もう一段高い価値を与える装置みたいな ものです。新たな『北海道文化』を生み出せたら、更に素敵な北海道になるに違いない!第一の開拓で、大地を拓く。第二の開拓は、産業を育てる。大地や産業を拓いた先人たちから、文化を拓く私たちへ。第三の開拓は『北海道ルネサンス』だ!文化の創生は未来の種。『誰を呼んだのか』ではなく『何が生まれ、誰が集まってきたのか』。『何人集まったか』だけではなく、『10年後に何が残ったのか』。 そこに自治体のお金を使い、民間のお金を呼び込み、若者の才能を育てていく。そんな地 域振興が展開される千歳市であってほしいと私は願う。

100周年の日に、私が感じたのは、諦めではなく『もったいなさ』だった。借り物の輝きに酔うだけの地域振興はもうそろそろ終わりにしませんか。 100年前、手作業で原野を拓いて空を目指した先人たちがいたように。今を生きる私たち もまた、次の100年に残る『北海道ルネサンス』の最初の一歩を、自分たちの手で踏み出していきたいと思うのです。新千歳空港100周年も、祝うだけのイベントにせず、次の時代に何を残すのかを考える良い機会にできたはずと思うと、少し寂しい気持ちだったので、今回このコラムを書いてみました。私見ゆえ、賛否両論、様々なご意見があるかと思います。けれど、新千歳空港をハブに新しい未来を描こうと千歳へやってきた私にとって、この街と空港のポテンシャルは愛おしく、そして誇らしいものです。

借り物の輝きに満足するのではなく、『私たちの街には何があるのか』を自分の言葉で語れる豊かさを、この千歳から創り出していきたい。このコラムが一人でも多くの方に とって、これからの千歳市の誇りになる、足元にある素晴らしい物語に目を向けるきっかけとなれば幸いです。

北海道の大地と空に敬意と感謝を込めて。新千歳空港100周年おめでとうございます!

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文/kazuquo

自治医科大学付属病院にてリハビリテーション医療に携わったのち、 福祉住環境開発のために、住宅メーカーへ転職。その後独立し、PR会社、VIPトラベル専門の旅行会社「コスモクラーツトラベル」などを経営しながら銀座の会員制バー「銀座ルーム」のママとして日々、銀座のカウンター越しに日本社会の行く末を見守っている。特定非営利活動法人ちとせ&BEYONDの発起人も務める。

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