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4月から新生活が始まる新入社員の中には、ビジネス文書における『時候の挨拶』の使い方に自信がない人もいるでしょう。相手に違和感を与えないためにも、正しい書き方を覚えることが大事です。4月に適した時候の挨拶や、使う際の注意点を解説します。
時候の挨拶とは
ビジネスメールや手紙における重要なマナーの一つが、時候の挨拶です。『漢語調』と『口語調』の2種類があり、相手や状況により使い分ける必要があります。
時候の挨拶には2パターンある
メールや手紙の冒頭部分に書く、季節や月の挨拶が時候の挨拶です。四季が豊かで季節感あふれる日本独特の慣習であり、ビジネスシーンとプライベートの両方で使います。
特に、ビジネス文書で使う場合は、社会人としての常識を試される重要なマナーの一つです。
時候の挨拶には、漢語調と口語調の2パターンがあります。季節や月ごとの挨拶を、失礼のないように書ける知識が求められるでしょう。
漢語調は、季節を表現する熟語に『の候』を続ける形になります。漢語調の挨拶は、言い回しが古くから決められているものがほとんどです。
口語調では、話し言葉で季節感を表現します。口語調には決められた型がないため、自分の言葉で自由に表現が可能です。
漢語調と口語調の使い分け方
冒頭に用いられる時候の挨拶は、後に続く内容の印象を左右する大事な部分です。相手にどのような雰囲気を伝えたいかを意識し、漢語調と口語調を使い分ける必要があります。
時候の挨拶で漢語調を選んだ場合、文章全体が引き締まり、落ち着いた印象を与えやすくなるでしょう。かしこまったビジネス文書や、目上の人に向けて書く場合に適しています。
口語調なら、柔らかい雰囲気を醸し出せます。個人同士でやり取りする場合や、カジュアルな印象を与えたい文書におすすめです。
手紙やメールを送る相手や自分と相手が置かれた状況を考慮し、どちらのタイプを使うのがふさわしいかを判断しましょう。
ビジネス文書の基本ルール
ビジネス文書は、前文・主文・末文の三つで構成するのが基本です。前文の冒頭に書く『頭語』は、末文の最後に書く『結語』とセットで使います。
「頭語」と「結語」をセットで使う
ビジネス文書では、最初に頭語を書き、次に時候の挨拶を続けるのが基本です。頭語を使う場合は、最後に結語で締める必要があります。
頭語には多くの種類があるため、文書の種類にふさわしい頭語を選ばなければなりません。頭語と結語はセットになっており、それぞれを正しい組み合わせで使うのがマナーです。
一般的な文書では、頭語に『拝啓』、結語に『敬具』を使います。より丁寧な印象を与えたいなら、頭語に『謹啓』、結語には『謹白』を選ぶと良いでしょう。
また、年賀状・暑中見舞い・弔事の挨拶状では、頭語と結語は不要です。プライベートな文書でも、頭語と結語を意識する必要はありません。
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時候の挨拶は「前文」、本題は「主文」に
前文では、冒頭に頭語を書き、次に時候の挨拶を書きます。その後は、相手の状況を祝福する言葉と日頃の感謝を示す言葉を続けるのが一般的です。
『貴社ますますご発展のこととお慶び申し上げます』『平素は並々ならぬお引き立てを心より感謝申し上げます』のように書きます。よく使われる定型文から、相手や状況に合ったものを選びましょう。
前文を書き終えたら、続けて主文を書きます。相手に伝えたい本題を、簡潔かつ正確に書くのがポイントです。
主文の書き出しには、『ところで』『さて』などの起語を使いましょう。前文と主文の切り替わり部分が明確になり、メリハリのある文章に仕上がります。
「末文」は結びの挨拶
文章全体を締めくくる結びの挨拶が末文です。今後の指導を請う言葉や相手の繁栄を願う言葉を書いた後、締めくくりの言葉を書き、結語で締めます。
指導を請う言葉には『今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます』などがあります。相手の繁栄を願う言葉は『貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます』のような文章です。
締めくくりの言葉は『まずは書中にてご挨拶申し上げます』『今後も変わらぬお引き立てをいただけますと幸いです』などが挙げられます。
末文で選ぶ言葉は、前文と同様によく使われる定型文から選ぶのが一般的です。前文で選んだ挨拶と似た内容にならないよう注意しましょう。
4月に使える時候の挨拶
4月に向いた時候の挨拶を、漢語調と口語調に分けて紹介します。結びの挨拶で使える例文もチェックしましょう。
フォーマルな漢語調の挨拶
4月上旬の挨拶に使える熟語には、『春分・春陽・仲春』があります。3月21日~4月4日頃の挨拶に適した言葉です。
4月5日~4月19日頃の4月中旬には、『麗春・清和・春粧・春風駘蕩』が使えます。桜が満開になる状況をイメージした熟語です。4月20日以降に使える言葉としては、『晩春・惜春・穀雨』が挙げられます。
春の暖かさを表現する『春暖・陽春』や春の花をイメージさせる『春爛漫・桜花』は、4月全般で使える言葉です。文書を送る相手の地域を考慮し、花の咲き具合や気温の状況にふさわしい言葉を選びましょう。
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私的な手紙など口語調の挨拶
古くからの知人や仲の良い友人に送る文書では、口語調の挨拶が適しています。4月を上旬・中旬・下旬に分け、それぞれの時期に使える例文を上から順に二つずつ紹介します。
【4月上旬】
- 春爛漫の心地よい季節がやってまいりました
- 花祭りの季節となりましたが、お元気でいらっしゃいますか
【4月中旬】
- 色とりどりの花を楽しめる、美しい季節を迎えました
- 夜のおぼろ月に風情を感じる時期になりましたが、健やかにお過ごしでしょうか
【4月下旬】
- 春の陽気を体いっぱいに感じながら、野山を散策したいこの頃です
- 花の盛りもせわしなく消え、春がますます深まってまいりました
結びの挨拶
4月に使う結びの挨拶には、春に関係した文章や相手の活躍・健康に関する文章がおすすめです。以下に挙げる例文を参考にしましょう。
- 春光うららかな季節に、皆様ますますのご活躍をお祈りいたします
- うららかな春の日差しのもと、どうか健やかにお過ごしください
- 社員皆様方のご健勝を祈念しますとともに、貴社の一層のご発展を心よりお祈りいたします
- 花冷えの折、お体には十分にお気を付けください
新年度が始まる4月の挨拶には、新生活の話題を取り入れても良いでしょう。さらなる応援の気持ちを相手に伝えられます。
- 新天地での今まで以上のご活躍を、心よりお祈り申し上げます
- 新年度が始まり諸事ご多用のことと存じますが、今後ともご指導賜りますようお願いいたします
時候の挨拶を使う際の注意点
季節感の強い挨拶を選ぶ際は、相手の居住地の状況を考慮することが大事です。見舞いの手紙では、時候の挨拶を省略することも覚えておきましょう。
相手の居住地に合った季語を選ぶ
時候の挨拶を使う際は、文書を送る相手の居住地がどのような状況なのかを考慮する必要があります。花の咲き具合や気候が季語とずれていれば、相手に失礼な印象を与えかねません。
例えば、桜の開花に合わせた季語を選択する場合、地域により開花時期が大きく違うことに注意が必要です。関東以西では早い地域で3月中旬から開花が始まりますが、東北や北海道では開花が5月にずれ込むこともあります。
相手の居住地の状況がイメージできない場合は、季節感の弱い言葉を選ぶのが無難です。
見舞いの手紙では省略する
見舞いの手紙では、時候の挨拶を省略するのがマナーです。時候の挨拶はじっくりと時間をかけて書いた印象を与えてしまうため、挨拶を省略し取り急ぎ書いたことを示す必要があります。
見舞いの手紙は前文も省略し、相手の状況を気遣う文章から書き始めるのが一般的です。できるだけ前向きな文面で、相手を励ます内容を意識しましょう。
目上の人に手紙を送る場合は、『急啓・急呈』などの頭語を使えばより丁寧な文章になります。対応する結語は『草々・不一・不備』です。
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構成/編集部