目次
「ありがたく存じます」という言葉は、どのようなシーンで使うのがよいのでしょうか?適したニュアンスで失礼なく使えるように、意味や使い方をチェックしましょう。実際に使う際に参考にしたい例文や、言い換え表現も紹介します。
ありがたく存じますの意味
『ありがたく存じます』という言葉を正しく使うためには、まずは意味を理解することが大切です。どのような意味が込められているのかを知り、使い方の参考にしましょう。表現を単語ごとに区切り、詳しく解説します。
感謝を丁寧に伝える表現
『感謝』を伝える表現の一つが、ありがたく存じますという言葉です。例えば、相手に何かしてもらったときに湧いてくる、うれしい気持ちや助かったという思いなどを、へりくだって表すために使います。
感謝を伝える言葉の中でも、丁寧さが含まれている表現のため、親しい人とのフランクな会話に用いることは少ないでしょう。ビジネスや冠婚葬祭の席など、少しかしこまったシーンに向いている言葉です。
ありがたいの意味
ありがたく存じますは、『ありがたい』と『存じます』の二つの言葉で構成されています。二つの言葉のうち、ありがたいは感謝を表す言葉です。
語源は古語の『有り難し』で、存在するのが珍しいこと、めったにない貴重なこと、といった意味で使われていました。現在は、古語で使われていた意味で用いられることはありません。
現在のように感謝という意味で使われるようになったのは、仏教の考え方が起源といわれています。
めったいにない『良いこと』が起こったときは、仏様の恩恵を受けているという考え方から、感謝の気持ちを表す言葉に変化したそうです。
「存じます」は思うの謙譲表現
存じますは『思います』の謙譲語です。そのため、ありがたく存じますは『ありがたく思っています』『うれしく思っています』といった意味を表しています。
謙譲語というのは、敬語の一種です。自分がへりくだることで相手を立て敬う意味合いがあります。そのため、自分と同じ立場の同僚や部下との会話やメールで、存じますと表現することはありません。
どんな相手に使えばいいの?
ありがたく存じますは、どのような相手に使うとよいのでしょうか?
丁寧な言葉のため、失礼にあたることはまずありませんが、使う相手によっては、よそよそしさを感じさせることもあります。最適な使い方を知り、使用することが大切です。
目上の人に使うのが一般的
謙譲語は敬語の一種であることから、ありがたく存じますは、目上の人に使うのが一般的です。例えば、上司や取引先の方に使います。
ただし、上司であっても、関係性によっては仰々しく感じることもあるでしょう。例えば、年齢が近く親しい上司の場合には、『ありがとうございます』で十分かもしれません。
相手との関係性に合わせて使うと、スマートな印象です。
より丁寧な表現は「ありがたく存じ上げる」
『ありがたく存じます』よりもさらに丁寧な表現に、『ありがたく存じ上げます』という言葉があります。
ただし、こちらはビジネスシーンでの利用は避けるのが一般的です。その理由は、『存じ上げています』と似ていることによる誤解を避けるため、といわれています。
存じ上げますは『知っています』の謙譲語です。ありがたく存じ上げますと表現した場合、感謝の意味なのか、知っていますという意味なのか、一瞬で判断ができないこともあるでしょう。
例えば、役立つアドバイスをいただいたときに、ありがたく存じ上げますと感謝の気持ちとして伝えたとします。
しかし、存じ上げますという言葉の意味から誤解されてしまい、怒らせてしまうことがあるのです。
適切な使用シーンは?
『ありがたく存じます』という言葉は、どのようなシーンに使うのがよいのでしょうか?感謝の意味以外でも、使えるシーンがいくつかあります。ビジネスで役立つ、便利な使用シーンを見ていきましょう。
メール、口頭どちらでも利用可能
『ありがたく存じます』の言葉自体は、文章で伝える場合にも、会話で伝える場合にも利用できる言葉です。ただし、かしこまった言い回しのため、ニュアンスとしてはメールなどの文章内で使う方がしっくりなじみやすいでしょう。
会話の中で使う場合には、スムーズに発音することを意識します。日常的に使う言葉ではないため、言い間違えたり、言いよどんでしまったりすることもあるでしょう。
目上の人に使う言葉のため、スムーズに発音できないことで、失礼にならないようにすることが大切です。
相手にお礼を伝えるタイミング
目上の人にお礼を伝えるときは、『ありがたく存じます』という言葉を使う良いタイミングです。
例えば、入院中に以前勤めていた会社の上司がお見舞いに来てくれた、取引先の社長にアドバイスをもらった、上司に推薦され新規事業のリーダーに抜てきされた、といったシーンで使えます。
日常的にはないような『珍しく良いこと』に対して感謝する言葉のため、そのくらい『感謝の気持ちを持っています』と伝えるのにも役立ちます。
遠回しな依頼表現としても使える
取引先の人や上司など、目上の人にしてほしいことがあっても、直接は言い出しにくいものです。そんなとき、遠回しにお願いをするシーンにも、『ありがたく存じます』が使えます。
上手に使えばソフトな表現で依頼できますし、やんわりとお願いできる表現のため、重宝するはずです。
例えば、取引先の方に書いてほしい書類がある場合や、上司に相談に乗ってほしいときなどに、「対応いただけましたら、ありがたく存じます」と伝えることで、スムーズに聞き入れてもらいやすくなります。
ありがたく存じますを使った例文
感謝やお礼の気持ちを表すと同時に、やんわりと依頼をするために使える言葉でもある、ありがたく存じますの例文を紹介します。実際の使い方を知ることで、メールや会話で使うときの参考にしましょう。
感謝を伝える例文
お礼や感謝の気持ちを伝える場合には、普段『ありがとうございます』と入れる部分に『ありがたく存じます』と入れればOKです。下記に例文を紹介します。
- 優しい言葉を掛けてくださったこと、ありがたく存じます
- 平素よりお引き立ていただき、誠にありがたく存じます
- 本日は遠いところご足労いただき、ありがたく存じます
- このような結構な品をいただき、ありがたく存じます
- そのような重要な役割に抜てきしていただき、ありがたく存じます
このように、相手にしてもらってうれしかったことの後に、ありがたく存じますと付けると、まとまりよく仕上がります。感謝の気持ちをより強く表現するには、『誠に』『大変』などと付けるとよいでしょう。
依頼する際に使える例文
遠回しに依頼やお願いをするときには、下記の例文のように、『もし○○なら』といった仮定表現の後に、ありがたく存じますを続けます。
- もしご予定が合うのであれば、明日お伺いさせていただけますと、ありがたく存じます
- 可能であれば、今週中に書類を提出いただけますと、ありがたく存じます
- もし可能であれば、具体的なプランを教えていただけると、ありがたく存じます
- お時間が空いているようであれば、資料に目を通していただけると、ありがたく存じます
- もしツールを使用できるなら、オンライン会議にしていただけると、ありがたく存じます
やっておいてください、と直接言えなくても、やってもらいたい気持ちを伝えられる表現です。
感謝を伝える言い換え表現を紹介
ありがたく存じますという言葉以外にも、丁寧な表現で感謝を伝えられる言葉があります。どれも意味は似ていますが、ニュアンスの違いがあるため、適した表現を選べるとよいでしょう。
それぞれの意味やニュアンスを理解することで、スマートに使い分けできます。
「ありがたく」の言い換え
感謝を表すありがたくの言い換えには、さまざまな言葉があります。文章で使われることの多い『幸甚(こうじん)』は、大変ありがたい様子を表す敬語です。より珍しい出来事に感謝しているときに向いています。
単にうれしいというだけでなく、名誉なことであると感じている場合には『光栄』がぴったりです。ただし、単に感謝やお礼を表現したいときに使うと、おおげさな印象を与えます。
日常的な会話でも使いやすいナチュラルな表現がしたいなら、『うれしく』『喜ばしく』と言い換え可能です。会話の中で、違和感なく適度な丁寧さで気持ちを伝えられます。
『幸い』と言い換える場合、感謝の意味はなく、遠回しに依頼をする表現として使います。
親しい仲なら「思います」でもOK
ややかしこまった言い回しである、ありがたく存じますは、相手との関係性によっては堅苦しい印象を与えることもあります。
もう少し柔らかい印象の言葉でお礼を伝えたいという場合には、謙譲語の存じますを『思います』に言い換えるとよいでしょう。
例えば、日頃からプライベートも含めて親交のある上司といった、親しい相手へのお礼では、ありがたく存じますが向いていないこともあります。
かしこまった言い回しが妙に他人行儀で距離感を感じることがあるからです。そのため上司へのお礼であっても、親しい間柄であれば『ありがたく思います』の方が、向いているでしょう。
その他の類語
『恐れ入る』という言葉も、ありがたく存じますの類語として、よく知られています。もともとは、大変恐れるという意味の言葉だったのが次第に変化しました。
何かしてもらったことに対して感謝したときや、相手の実力に圧倒されたとき、自分に非があることを知り謝罪するときなどに使用する、さまざまな意味のある敬語です。
特に、ビジネスシーンでは、目上の人や他社から評価されたことに対して、謙虚にお礼の意味を表す場合に用いられます。例えば、自社のサービスをほめられたときに、恐れ入りますと返答するのです。
相手への配慮を表すクッション言葉としてもよく使われている、使用頻度の高い言葉でもあります。
▼あわせて読みたい
構成/編集部