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秋分の日の食べ物として、おはぎや旬の食材が知られています。これら行事食の意味や由来と同時に、秋分の日についても知ることで、有意義な祝日を過ごすヒントになるかもしれません。お彼岸と秋分の日の関係についても紹介します。
秋分の日はいつ?
毎年9月にある秋分の日ですが、実は毎年決まった日にちではありません。秋分の日はいつで、どのように決定されているのでしょうか?
毎年9月23日ごろになる国民の祝日
「9月23日が秋分の日」と覚えている人は多いかもしれません。しかし、秋分の日は太陽の動きで決められているため、9月23日以外が秋分の日になることもあります。
正確な日にちを決定するために用いられるのは、『暦象年表』に掲載されている、国立天文台が観測した秋分のタイミングです。これに基づき、毎年2月に翌年の日付が閣議で決定され、官報で公表されています。ちなみに、これは春分の日も同じです。
天体の動きに基づいて日にちが決まる祝日はほとんどなく、世界的に見ても珍しい例です。
どのような意味や由来がある?
秋分の日には、どのような意味や由来があるのでしょうか?お彼岸との関係性も紹介します。
そもそも秋分とは
秋分は二十四節気のうちの一つで、秋分の日は『秋分が始まる日』のことです。
秋分が始まる日は、太陽が秋分点を通過する日を観測して求められます。秋分点とは、太陽の通り道と、地球上にある赤道を天に延長した天の赤道が交わる点のことです。秋分点の上を太陽が通る瞬間が秋分です。
このように秋分が起こる日は、太陽は真東から昇り、真西へ沈みます。そのため、昼と夜の長さがほぼ同じになるのです。そして、秋分を境に、夜の長さがどんどん長くなっていきます。
秋のお彼岸との関係
秋のお彼岸の期間は、秋分の日と前後3日を合計した『7日間』です。秋分の日は、仏教では「この世とあの世が最も近くなる日」と考えられていて、先祖供養にぴったりとされています。
生きている私たちの思いが「故人に届きやすい日」として、秋分の日前後のお彼岸に『お墓参り』をする風習が根付いています。そして、この風習をもとに、秋分の日は『祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ』祝日として制定されました。
秋分の日の食べ物といえばおはぎ
秋分の日には、おはぎを食べる習わしがあります。おはぎを食べる理由や、ぼたもちとの違いを知り、おいしく味わうと同時に、秋分の日の意味や由来を振り返りましょう。
食べる理由
おはぎは、基本的には蒸した餅米をつぶし、あんこで包んだお菓子です。
餅には五穀豊穣(ごこくほうじょう)の願いが込められています。また、あんこの原料である小豆は、その赤い色により、古くから魔除けの意味があるとされているものです。
餅も小豆も、古くからお祝いや儀式といった『特別な席』に欠かせませんでした。そのため、秋分の日にはご先祖様への感謝と家族の健康を願う気持ちを込め、おはぎがお供えされたのです。
秋分の日のおはぎが定着したのは、江戸時代くらいといわれています。この時代には、まだ甘いお菓子は一般的ではありませんでした。ごちそうである甘いおはぎを振る舞うことで、秋分の日を『特別な日』としたのです。
ぼたもちとの違い
おはぎと同じように作るお菓子に、ぼたもちがあります。名前は違いますが、作り方も材料もほとんど同じです。二つの違いは、主に『あんこの種類と形』といわれています。
秋分の日の行事食であるおはぎを作るのは、小豆が収穫された直後の秋です。皮の柔らかい小豆であんこを作れるため、粒あんが使われます。
一方、ぼたもちは春のお菓子です。保存技術が今ほど発達していない時代、小豆の皮は春には固くなっており、取り除いてこしあんにするのが一般的でした。そのため、ぼたもちには、こしあんが使われます。
また、おはぎは秋の七草の『はぎの花』に似せて小ぶりで俵型に、ぼたもちは『ぼたんの花』に似せて大きく丸く作るのが習わしです。
夏と冬にも呼び名がある
秋分・春分には、それぞれ、行事食におはぎとぼたもちを作る風習があります。同じように作るお菓子は夏と冬にもあり、それぞれ違う風流な呼び名が付けられているのです。
おはぎは餅ではなく米をつぶして作る地域もあることから、夏と冬の呼び名は「餅つきをしない餅」から連想されていることもあります。
夏の呼び名は『夜船(よふね)』です。餅なのに「いつついたのか分からない」から転じて、「夜の闇の中でいつ着いたのか分からない」という意味を持つこの名前が付けられました。
また、冬には『北窓(きたまど)』と呼ばれます。「餅つきをしないので月を知らない」が転じて、「北向きの窓からは月が見えない」と連想して付けられた名前です。
秋分の日に食べたい旬の食べ物
秋分の日は、先祖を敬い故人をしのぶ日です。おはぎを作って食べる風習はよく知られていますが、それ以外にも『旬の食べ物』を行事食として取り入れる地域もあります。旬の食べ物が、ご先祖様や故人に思いをはせるきっかけになるかもしれません。
里芋
親芋を取り囲むように子芋が成長する里芋は、『豊作と子孫繁栄』の象徴として食されてきました。非常に長い歴史のある作物で、伝来は縄文時代ごろとされています。稲作が始まる前は、主食とされていたこともあるそうです。
おいしい里芋を選ぶなら、泥付きのものが正解です。表面を覆う泥が、里芋を乾燥から守ります。また、ひび割れがないことや、芽が出ていないかどうかもチェックします。丸く重みのあるものが、よい里芋の証拠です。
シンプルに皮のまま蒸して『きぬかつぎ』にしても、定番の煮物にしても、旬の里芋ならおいしく仕上がります。また、おはぎに粘り気を出すため、米をつぶすときに里芋をプラスする地域があるそうです。
サンマ
旬のサンマは、焼くだけでおいしい秋の味覚です。焼き魚でシンプルに食べるだけでなく、かば焼きにしたり、ショウガで煮たり、竜田揚げにしたりといろいろな楽しみ方ができます。
脂が乗ったサンマは、尾のつけ根や口先が黄色いのが特徴です。丸々と太っていて、背が青黒く腹が銀色なのものを選ぶとよいでしょう。また、目が澄んでいてピンとしているものが、より新鮮な証拠です。
ブドウ
世界中で古くから栽培の記録があるブドウは、秋が旬の果物です。みずみずしい一房を選ぶには、粒の色が濃いこと・張りがあること・枝の切り口が緑で新しいことを基準に選びましょう。
甘い果汁はとてもフレッシュで、秋分の日のおやつやデザートにぴったりです。定番の巨峰はもちろん、藤稔・ピオーネ・安芸クイーン・ルビーロマン・シャインマスカットなど、さまざまな品種があります。
マイタケ
秋が旬の食材といえば、キノコです。「見つけると舞うほど嬉しい」として名前が付けられたマイタケも、秋分の日にぴったりな食べ物といえます。マイタケごはんや天ぷらなどの定番料理はもちろん、玉子とじにしてもよいでしょう。
炒め物として調理をするときは、水分が出すぎないように注意が必要です。手早く調理することで、マイタケの特徴である歯ごたえを生かした調理ができます。肉と一緒に炒めてもよく合うキノコです。
スーパーでおいしいマイタケを見分けるコツは、色と厚みを重視します。濃い茶褐色で光沢があり肉厚なものを探しましょう。調理の際、パキッと手で折れそうなくらい厚みのあるものを選ぶのが正解です。
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構成/編集部