■あなたの知らない若手社員のホンネ~株式会社ドミノ・ピザジャパン/星野智也さん(33才、入社4年目)~
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若手社員の仕事への取り組みを知ることは、中間管理職にとって、部内の若手を見直すきっかけになるかもしれない。若手にとっても、自分と同じ立場で働く人の仕事ぶりは興味があるだろう。これまでバラエティーに富んだ職種に従事する若手社員を紹介してきたこの企画。今回は宅配ピザのドミノ・ピザである。
シリーズ47回、株式会社ドミノ・ピザジャパン 営業部東日本第一営業課 スーパーバイザー 星野智也さん(33・入社4年目)。全国で550店舗以上展開する宅配ピザのドミノ・ピザ、“お持帰りなら1枚買うともう1枚無料”の割引は知られている。
星野さんは海外の音楽大学を卒業し、29才までチェロの演奏家を生業にしていたという異色の経歴の持ち主。芸術とは真逆の仕事に転職した星野さん、人生いろいろだが、音楽家とは真逆のピザ店の店員、どんな苦労が待ち受けていたのか。
自分のミスをどう取り返すか?
入社は2015年10月、研修を経て配属されたのは大田区の蒲田店。赴任の時、店長は優秀だと告げられていました。9時半に出勤してまずやることは、オーブンのスイッチを入れること。ピザが焼ける温度になるまでスイッチをオンにしてから1時間はかかります。
ところが配属になって間がないある日、出社した僕はオーブンのスイッチを入れ忘れてしまった。気がついたのは開店の11時で、すでに10数件の注文が入っている。お腹を空かして待ったいるお客さんに、30分以内に届けることができない。
「あ、そう、お客様はどう思うだろうね」店長は「バカヤロー!!」「ふざけんなぁ!!」とか、声を荒立てて怒るタイプではありません。だから余計責任を感じるといいますか。オーダーを頂いていたお客さん全員に、「申し訳ありません。オーブンが稼働しておりません。すべて私の責任で本当にもう……」と、事情説明と謝罪の電話をしました。
僕はどこか、気分で生きているところがあって。もう一つの失敗もそんな性格が災いしたのか。蒲田店の店長は何より食材の管理が基本だという考え方です。閉店後は毎日食材の棚卸しをして、140種ほどの食材の量や鮮度を把握し、明後日の食材を解凍したり、発注の量を確認したりするのです。
ある時、僕は本部に食材を発注するボタンを押し忘れてしまって。未発注だと前週の同じ曜日に発注した食材と同じ量が、自動的に店舗に届くシステムです。ところが、たまたま前週の同じ曜日がクリスマスだった。クリスマスはものすごく売れます。
「星野さん、これなんですか?」アルバイトが見上げるほど、ピザ生地をはじめ食材が入った段ボールが店に山積みになってしまった。暮れや正月はクリスマスほど売れない。このままでは食材を、廃棄処分にすることになってしまう。
この時も僕の報告に店長は何も答えず、声を荒立てたりもしませんでした。「どうしたらいいですか?」という問いには答えない。どうすればいいのか、本人に考えさせる。それが優秀だと告げられた店長のやり方でした。
「発注をミスってしまって、食材をもらっていただけませんか」僕は、周辺の20近いドミノ・ピザの店舗に電話をかけまくりました。車で食材を他の店に運んで、食材の廃棄処分を回避したんです。