●完成、そしてRchから音がでない!
電圧測定結果は全て許容範囲内で一発OKだった。これは幸先がいい。早速、裏ブタを閉めてスピーカーに接続して音を出してみる。少しボリュームを上げると結構、大きな音で音楽が流れた。しかし、左からだけで、右から音が出ない。まあ、よくあることなので驚かない。怪しいのは入力と出力である。特にアース線を使った入力が怪しい。私はシールド線が苦手なのだ。ボリュームの配線をチェックすると何と配線が間違っている。ケーブルから作り直して再配線した。今度は徐々に音が大きくなるが、まだ右のスピーカーから音が出ない。
仕方ないので電源、アース、ヒーターから配線を見直す。何とアース配線のミスを発見。さらにイモハンダくさいところをやり直す。これでも右から音が出ない。キットに付属する「ザ・キット屋ガイドブック」を読むと、キット屋秘伝のチェック方法というのが掲載されていた。秘伝なのにここで公開していいかどうか迷うが、その方法とは。
出力に不要になったスピーカーを接続、入力にはショートピン、または何も接続せずに、電源を入れたら、新品の割り箸を使ってハンダ付けした個所や配線材を軽くトントン叩く。これでバリッとかボソボソとしたノイズが出たら、その部分が接触不良なのだ。
試してみるとカソード抵抗プレート周りからノイズが出まくる。さらにMT管の周辺からも音が出たので、この部分も見直す。
●原因は真空管ソケットの接触不良なのか、目出度く音が出た!
今度こそと思ってMUSIC BIRDチューナーと接続してみるが、やはり右側から音が出ない症状は改善されない。これはもうSUNVALLEYに送ってチェックしてもらうしかないと考えるが、もしかすると真空管がダメになっているのかもしれないと思い直し、左右の「12AT7」と「12AU7」を差し換えてみた。これで右から音が出て、左から出なければ真空管が原因ということになる。
結果は、両方から音が出た。真空管は正常でソケット周りの接触不良だったようだ。電圧測定は問題なかったのに! とにかく良かった。これでカスタマイズにも取りかかれる。真空管プリアンプ『SV-Pre1616D』と接続して慣らし運転に取りかかった。といっても普通に音楽を聞くだけだが、その音は一聴してシングルアンプとは違い、ワイドレンジで音場感に優れている。
最後に真空管アンプキットを作って配線を間違えると爆発とか発火するので怖いと思う方がいるかもしれないが、過大な電流が流れると抵抗はすぐに炭化してしまい、コンデンサーはポンという軽い音を立てて破れるだけなので、そんなに怖くない。すぐに電源を切ればダメージは少なく、放置しているとヒューズが飛んで強制的に電源が落ちる。場合によっては真空管がダメになることもある。
実は「真空管・オーディオ大放談」の収録中にガイドピンの折れたKT150があり、間違った方向に挿したことに気付かず電源を入れたら盛大に煙が出てくるというハプニングがあった。すぐに電源を落としたのでダメージ受けたのはコンデンサーだけで大事に至らなかった。真空管アンプは意外と丈夫なのである。
次回はカスタマイズ編でお会いしよう!
写真・文/ゴン川野