勝利のために最後まで全力プレーを怠らない
野球教室に来た小学生が、すごく張り切っていいところを見せようという気持ちだった――。
それは、敵地シアトル・マリナーズ戦(日本時間5月5日)で、今シーズン6度目のマルチヒットを記録した直後の言葉だ。現在は球団の会長付き特別補佐という立場だが、これまでメジャーでも幾多の記録を打ち立ててきたイチローが見守る中、その存在を身近に感じて自然と高揚感が湧き上がった。純粋な「野球少年」のような姿が、そこにはあった。
トロント(カナダ)でのブルージェイズ戦(日本時間5月25日)では、「5番・指名打者」で3試合連続先発出場を果たし、3打数2安打2四球で1試合4出塁を記録。大谷の野球人としての本質を見たのが、その最終打席だ。9回表2死からのピッチャー返し。内野手全体が右寄りに守り、二遊間が狭まった「大谷シフト」のわずかな隙を抜け、打球はセンター前へ運ばれた。
普通ならば単打になるところだが、中堅手が打球処理をもたつく間に、さらに二塁ベースが空いている状況を見て、大谷は一塁ベースを回って一気に走力を加速させた。記録は、センター前への二塁打だ。瞬時の判断力と驚異の走力に改めて能力の高さを見たが、同時に、チームの勝利のために積極的に次の塁を狙う、最後まで全力プレーを怠らない、「大谷らしさ」をまたしても見たような気がした。
オーロラビジョンに映される大谷。エンゼルスで最も人気の選手に。