相模鉄道(以下、相鉄)の新型車両20000系が2017年7月に登場し、2018年2月11日にデビューする。相鉄が進めているデザインブランドアッププロジェクト初の新型車両で、将来は東京急行電鉄(以下、東急)東横線及び目黒線に直通する予定だ。
■未知の世界
かしわ台車両センターで、20000系の記者発表会が執り行なわれた(左は滝澤秀之相鉄社長、右はそうにゃん)。
ただいま相鉄では、都心直通ルート「相鉄・JR直通線」(2019年度下期開業予定)、「相鉄・東急直通線」(2022年度下期開業予定)の工事を進めており、20000系は後者用の車両である。
さて、他社線との相互直通運転については、可能な限り双方と合わせる必要がある。
例えば、車両規格。相鉄はJRグループの在来線車両と同等に対し、東急は幅が若干狭いほか、裾絞り車体(車内空間を確保できるメリットがある)の車両を保有していない。
このため、20000系は目黒線の直通運転に対応できるよう、車体幅を2770ミリ(最大2787ミリ)のストレート車体とした(参考までに、2009年5月に登場した11000系は、2950ミリの裾絞り車体)。
運転席のワンマスコンハンドル(力行とブレーキをひとつにまとめたもの)も、10000系と11000系は左手操作式に対し、20000系は東急に合わせ両手操作式とした。乗務員室内のスイッチの配置も異なる。
前面には非常用の貫通扉も設けられた。東急は地下鉄など相互直通運転を実施しているほか、東急管理の地下線や地下駅(東横線渋谷―代官山間など)があり、必須アイテムなのだ。
保安装置については、1台でATS(自動列車停止装置)、ATC(自動列車制御装置)、ATO(自動列車運転装置)の切り替えができる統合型を搭載し、東急との相互直通運転に備えている。ただし、現段階、東京メトロなどの他事業者と直通運転をするかは未定だという。
20000系は今まで採用していなかった装置などを入れたことで、訓練や試験の期間を確保する必要が生じた。このため、当面は1編成のみの“レア車両”となり、増備については、「相鉄・JR直通線」用車両落成後の予定だ。
■エクステリア
20000系の車体は軽量化に優れたアルミで、横浜の海をイメージした「YOKOHAMA NAVYBLUE」を身にまとう。鮮やかで深みのある色彩に加え、鏡のように磨き上げられたボディーは、撮影者や景色が映りこんでしまうほど、美しい。このカラーリングを眺めると、『もっとあぶない刑事』の港302(日産自動車のレパード)を思い浮かべる読者が多いと思う。
また、近年の新型通勤形電車では珍しい一色塗り。相鉄運輸車両部の関根雅人車両課長によると、「車両の屋根を白く塗ったらカッコイイ」という意見もあったそうだが、見送りとなった。
車体でYOKOHAMA NAVYBLUE以外の色を用いているのは、車両番号の白、号車表示の白地、個別ドアスイッチ(半自動ドアボタン)のスカイブルーなどで、“アクセントカラー”といえるだろう。
外側はヘッドライト(前部標識灯)、内側は進行時の飾り灯兼テールライト(後部標識灯)。
前面は、デザイナーとメーカーの協働による豊かな造形を3D削り出し、プレス、たたき出し加工を駆使したという。特に装飾的要素のあるグリル状のアクセント、ライトとそのケースのデザインが秀逸だ。
相互直通運転先の東急は他社車両も含め、すべて無塗装。東急沿線の人々にとって、20000系はインパクトの強い車両になりそうだ。