製品は完成段階を迎えましたが、この製品は本当に20〜30代にウケるのか、この香味を使えば、口臭の不安を予防できるのか。
「このハミガキの効果を検証したい?」
上司は少し首を傾げました。口臭の不安の予防のような人の情緒に結びつくものは検証が難しい。でも、自分たちが仮説を立て製品化したものが、果たして納得できる評価を得られるのだろうか。
「検証に関してはまず、社内の調査部門にお願いをします」
女性は柔軟剤等の香りに敏感で、その分野の研究はされていましたから。
「柔軟剤や制汗剤は身にまとう香りだから、気持ち良さをイメージしやすいが、ハミガキの香味は、そこまでイメージできないんじゃないか」と言いつつも、上司は自由にやらせてくれました。
社内の過去の蓄積を参考に、“スーとしましたか”“どういう気持ちになりましたか”等々、形容詞的な細かい質問項目をたくさん用意して。モニターの方に使ってもらい、感覚に関するアンケートの回答は段階的に分け、分類して。これを使った時の自分の感情に近い写真はどれか、風景写真や暗い気持ちになる写真や、人の楽しそうな表情とかを選んでもらったりしました。検証で香味に対して自分たちが立てた仮説を、裏付けるような結果を得られました。僕が開発を担当したピンクのパッケージの『NONIOピュアリーミント』を含む、3種類の発売は今年の8月でした。
今は制汗剤の部所で、「Ban」シリーズを手がけています。まず部所に置かれたバイクマシーンで体を動かし、自らかいた汗で研究し、検証していく。そんな研究開発の基本を繰り返しているところです。
えっ、今手に持っている『NONIO』を資料としていただけないかって。実は、売れ行き好調で在庫が足りなくて、僕もサンプルが手に入らないんですよ。申し訳ありません」
取材・文/根岸康雄