●これは上司が正しかった。
『NONIO』の開発に話しを戻すと、想定した20〜30代の女性のフルーツのトレンドは、パイナップルやラ・フランス等の洋梨類とか、ライトな甘さだと。ではミントをベースにこれらのフルーツを乗せて香味を作る時、どこまでミントの味を出すか。フルーツとミントのバランスが、開発では一番難航した点でした。
今の女性にはミントの味わいよりも、パイナップルや洋梨類やピーチ等の甘さが、はっきりわかるハミガキのほうが、ウケるんじゃないか。フルーツの味を強く出したい。
「製品のターゲットとなる年齢層と、僕らは同じだ。自分の感性を信じてやってみたらいいんじゃないか」と、僕の考えに新製品開発のチームリーダーも応援してくれました。
「でもね、三田くん、うちには膨大に蓄積されたミントに関する技術がある。それを生かしたものにしたい」
上司はフルーツの香味を強く打ち出したいという僕の提案に疑問を唱えました。
「フルーツの味を強く感じても、それは一瞬で持続はしないよ」
確かに口臭を予防するこのハミガキにおいて、口の中でスーッとする感じが持続することは、大事なファクターです。
「3年間、品質を保持しなければならないという社内のルールを、考慮しなくてはいけない。フルーツの味を強調すると、3年間同じ味を保つことはできないよ」
本当にそうなのかな……上司の言葉に僕は納得できなくて。フルーツの香味を強くした自分のオリジナルと、上司の意見を取り入れたものと同時並行でテストをしたんです。3ヶ月6ヶ月と追って行った時、確かに僕のオリジナルは味わいがなくなっていった。ミントを強く生かしたものは香味がしっかり出ていて、同じ味が持続できている。これは上司の意見が正しかったと納得しました。