極上のおもてなしを受けながら観光地を巡るクルーズトレインが、JR東日本と西日本で運転を開始する。その個性的な列車の全容を紹介しよう。
◎旅の奥行きを広げる多彩な趣向を凝らす
日本におけるクルーズトレインの歴史は、2013年に登場したJR九州の「ななつ星 in 九州」から始まった。豪華な寝台設備と最上級のおもてなし、そして厳選された素材を使った贅沢な料理を味わいながら巡る列車の旅は好評を博し、鉄道が単なる移動手段から、乗ることを楽しむものへと価値観を変えるきっかけとなった。
この「ななつ星」の成功が、今回の「トワイライトエクスプレス瑞風」や「トランスイート四季島」のデビューにつながったのは言うまでもない。どちらもフラッグシップ列車の位置づけで開発され、これまでになかったゴージャスな新しい旅のあり方を提案する。
JR西日本が6月17日から運行を開始した「瑞風」は、京都、大阪各駅を始発駅に、山陽・山陰方面を周遊する5つのコースが用意されている。外観で特徴的なのは、かつての名特急「つばめ」に連結されていた伝説の展望車を彷彿とさせる展望デッキが設けられた先頭車両だ。
「どこか懐かしさが残る形として、そのプロポーションを吟味し、玉成を重ねた結果、このデザインが完成しました」と、エクステリアデザインを担当した福田哲夫さん。
一方、5月1日から運行開始となったJR東日本の「四季島」は、関東・甲信越、東北各地から北海道・登別まで、季節に応じた多彩な旅のメニューを設定した。こちらも天井までガラス張りになった先頭車両のデザインが目を引く。「美しい自然と文化を堪能できる展望スペースなど、この旅でしか体験できない特別なエクスペリメントを盛り込みました」と内外装を担当した奥山清行さんは語る。
客室についても、「瑞風」は世界でも珍しい1両1室の「ザ・スイート」、「四季島」では2階にリビングルーム、1階に寝室を備えたメゾネットタイプの「四季島スイート」が用意され、その贅沢な空間使いが話題になっている。
どちらも高額な料金にもかかわらず、高い申し込み倍率で人気の高さがうかがえる。お金があったとしても、抽選に当選しなければ乗車は叶わないわけだが、一生のうちに1度は乗ってみたい列車だ。