■パワハラ上司の本当の恐怖
心理カウンセラーの観点から見ると、パーソナリティー障害を抱えるパワハラ上司と付き合う上で「あのクソ上司が!」と思えるうちは、まだ正常らしい。一番恐ろしいのは、上司が部下を「自分はダメなやつだ」と洗脳してしまうことらしいのだ。
先ほどのチェックリストにも書いたが、パーソナリティー障害には「相手に罪悪感を持たせる」ことが挙げられる。その罪悪感を使って、相手をコントロールしようとするのだ。自分にまったく非がないのに、仕事でミスをしたことにされ、上司の責任も押しつけられ、挙句の果てには人格否定もされる。このような日々が続くと、やがて正常な判断ができなくなり、すべて自分自身が悪いような気がしてくる。そのうち理不尽に押しつけられた責任を残業でカバーしたり、いつもミスを気にするようになって仕事のパフォーマンスが落ちたり。そしてまた上司からパワハラを受ける。これがパーソナリティー障害を抱えるパワハラ上司の常とう手段らしい。おお……某議員の顔が頭を過ぎるぞ……。
「このような状態を防ぐため正常な判断能力が残っているうちに、他の上司や同僚、地元の友達など、誰でもいいのでまずは第三者に相談してください。今の状況がおかしいことに気づき、洗脳から逃れてください。なによりパワハラ上司は第三者の存在に弱いです。もともと親子の二者関係をこじらせた過去を持っているので、そのこじらせを第三者に見せることを嫌がる傾向にあります。上司と部下の二者関係も同様に、第三者の客観性が入るのを非常に嫌がります。第三者を巻き込む状況を作ることができれば、パワハラ上司も大人しくなるでしょう」。
また、部下側には「罪悪感を持ちやすい善良な人」という特徴が挙げられるそうだ。パワハラに巻き込まれやすい人柄を持っているから被害を受ける。したがってパワハラ上司に対して毅然とした態度で臨むことも緩和する方法の1つと言える。
「根本的な解決方法としては、パワハラ上司を心理カウンセラーや医療機関に連れていくことですね。現実的なラインとしては、会社の産業医に相談したり、パワハラ上司の上司にあたる人物に相談して解決を図ったりすることかなと思います。あとは『労基に行くぞ!』と脅すとか。どちらにせよ、上司と部下の二者関係では限界があるので、他人や機関に頼りましょう」。
以上、パワハラ上司と上手に付き合う方法をご紹介した。筆者が本記事で一番伝えたかったことがある。それは、ブラック企業が増えてしまった理由にはもっと根本的な問題があるのではないかということだ。その1つとして「パーソナリティー障害」がからんでいる可能性があり、それを国民全体で問題視しない限り、パワハラ上司、ひいてはブラック企業の問題も解決しないと思う。あとは、どっかの偉い人が本記事を読んで国民に訴えかけてほしいと願う。
取材・文=いのうえゆきひろ