ルイ・アームストロングからエラ・フィッツジェラルド、そして美空ひばりまで!
◎音楽を聴くことは「人」を聴くこと
昨年4月、エリック・クラプトン、ボブ・ディランら巨匠たちが相次いで来日し、大人の音楽ファンを熱狂させた。共通して彼らに惹かれるのは、存在感と個性が音楽に溢れているところだ。時代が変わっても、どんな曲を歌っても、最後に残るのは、その「人」なのだ。彼らを見て今あらためて「音楽は人」であると考えさせられた。
そこで注目したいのが、ジャズ・ヴォーカル。ジャズ・ヴォーカルでは「曲」は素材でしかなく、いかに「個性」を盛り込めるかが勝負どころである。音楽の究極の魅力がそこにある。ここではさまざまな分野で「ジャズ耳」を持つ人たちにジャズ・ヴォーカルのベスト・アルバムを選出していただき、さらに編集部のお勧めを加えて「ベスト20」(順不同)をまとめた。いずれもジャズ・ヴォーカルの魅力に溢れているので、興味のあるものどれか1枚でも聴いてみるといい。また、昨年4月に創刊されたCDつき隔週刊マガジン『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』(小学館)も最適な教科書としてお勧めだ。
「音楽は人」ということがわかると、おのずとどんな音楽ももっと面白く聴こえてくるはずだ。
【01】
カーメン・マクレエ『ブック・オブ・バラーズ』(Kapp)1958年
メロディを崩したりスキャットするだけが個性ではない。素直すぎる歌唱に思えるかもしれないが、自分だけに囁きかけてくるような、しっとりとした風情がたまらない。これもジャズの技術と表現だ。
後藤雅洋(ジャズ評論家・『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』監修者・ジャズ喫茶「い〜ぐる」[東京・四谷]店主)
【02】
メロディ・ガルドー『マイ・オンリー・スリル』(Verve)2009年
2008年メジャー・デビューのジャズ・シンガー・ソングライター。しっとり濡れた艶っぽい声が魅力だが、100年前から歌い継がれてきたような、スタンダードにも負けない自作曲も素晴らしい。
田中伊佐資(ジャズ・オーディオ・ライター)