マイナンバーカード
連載初期はマイナンバーカードの普及にブレーキがかかっていました。そしてマイナポイントの配付などのキャンペーンとともに普及していく途中で、2023年の春には個人情報の紐づけミスを抱える自治体が多く発生し、一時はそのニュース一色になることもありました。
まだ紙の保険証の撤廃などに関連して、懸念を持っている国民もそれなりにいますが、義務ではないですし、今後は行政手続きや申請などがマイナンバーカードによって簡素化していくなかでDXの恩恵が享受できるようになっていけば、自然と多くの人に行き渡るフェーズになると考えられます。
先日の3月5日の閣議決定にて25年度の夏を目処にマイナンバーカードをスマートフォンに搭載して運用できることになりました。スマートフォン市場でシェアの大きいiPhoneについては、Apple社との協議が続いているという状況のため、現状では電子証明の機能のみをAndroidスマートフォンで利用できたのですが、券面に記載されている個人情報も安全に取り扱えるということになります。
マイナ保険証の搭載もできるようにしていく方針ということで、それ以降もマイナポータルの内容拡充や、各地方自治体の行政サービスとの連動など、一層スマホが生活に密着した端末になっていくと考えられます。
小説ではこういったスマホが個人情報と密接に連動する姿の行き着く先として、PA端末というスマホの親分的な存在を登場させています。パーソナルなアシスタントとして人々の生活を支えるイメージです。便利さと、個人情報をどうハンドリングしていくかという課題のバランスはいつも両輪ではありますが、個人情報保護法が3年ごとに見直されていることもあり、端末が進歩しても充分に法整備が追いつく状況にあるといえます。
そうそう、小説との連動でちょっと困ったことが発生しそうです。それは今後「マイナンバーカード」の呼称が変わるかもしれないということです。個人的には「こくみん電子認証カード」くらいストレートな呼称になってくれると嬉しいなと思っていますが、そうなると2040年に小説内で公務員が「マイナンバーカード」という呼び方をしているというのはおかしい、ということになりますね。長期連載中に世の中のほうがどんどん変わっていくというのは面白いものです。
むしろ、想像しうる範囲の近未来描写を遥かに超えて、人々の生活が便利になり、豊かになっていくということもありますから、良いことなのだと思います。
<リンク>マイナカード、スマホ搭載で本人確認が可能に 25年夏にも運用 | 毎日新聞
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行政DXはまだまだ or いよいよ?
連載の企画を考え始めた2020年の秋から、地方行政の最前線に身を置いているわけですが、それから3年半が経ち、随分と進んだと思えることもあれば、現実的な課題や古くからの解決しがたい慣習などによって歯がゆい思いをすることも多くあると感じています。
理想をよそに「形だけでいいからせめてデジタル化くらいしてくれ」と妥協してしまいそうになることもあります。簡単に背中を押すだけでグイグイと進むこともあるのに、人間や組織や社会の「行動変容」はこんなにも難しいことなのかと感じる場面は確実にあるのです。
直近では能登半島地震における被災者データを的確に扱い、多くの人を救うにはどうしたらよいかということが目立つトピックなのですが、災害が発生した後にできる限りの対応をするのはどんな自治体もやり切るというのは百も承知で、では災害が起こる前にデジタル分野においてどれくらいの準備をしておけるかとなると、難しいというのを実感しています。
「自分の地域では(まだ)起こっていない」という認識から、能登半島や千葉東方沖は地続きである以上「自分の地域に(もう)起こった」と考え、いよいよ来るという見地から日本全国で準備が進むことを期待しています。
震災はできる限り避けたいインシデントですが、当然、行政には平時の業務が山のようにあり、少子化の害が明らかに迫ってきています。税収も減りますし、お金があったとしても予算を実行するだけの人が公務員にも民間企業にもいないという時代がすぐに来ます。
今のうちにできる限りのDXを進行し、人の手を空け、時間を空け、人でなければ対処できない問題に充分にリソースを割けるようにしていくことが肝要です。
企画に1年、予算取りに1年、開発して1年、システムが動き出すのは年度をまたいでその頃には人事異動…というテンポ感はなかなかつらいものがありますが、コロナ禍で企画が急がれた各種システムが稼働を始めるという意味では、まだまだ達成できていない分野でもありつつ、いよいよその効果が現れる時であるとも言えます。
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能登半島地震が問う防災DXの重要性、自治体に求められるのは常に被災前夜を過ごしているという認識
DX全般にまつわる課題は今後も増加
さて、このコラムではここまでに挙げたジャンルの話題を多く扱ってきましたが、DXに関連する事項はどこにでも存在し、普遍的なものであるとも言えます。それは今回、意識的に何度も出しましたキーワード「行動変容」に依るものだからです。
これからもこの潮流を追い続けていきたいと思いますので、これか、クライマックスを迎える小説ともども、どうぞよろしくお願いいたします!
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文/沢しおん
作家、IT関連企業役員。現在は自治体でDX戦略の顧問も務めている。2020年東京都知事選に無所属新人として一人で挑み、9位(20,738票)で落選。
このコラムの内容に関連して雑誌DIME誌面で新作小説を展開。20年後、DXが行き渡った首都圏を舞台に、それでもデジタルに振り切れない人々の思いと人生が交錯します。
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実は今回は表紙もAIに作ってもらいました。2024年のアップデートはまずはここから!
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DIME2024年4月号
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<新連載> 気になるあの人の“働く主義”に迫る「ハタラキズム」 第一回 芳根京子さん
〝働くうえでの主義=ハタラキズム〞とは?
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