裁判所のジャッジ
Xさんの3連勝です。地裁・高裁・最高裁ですべて「解雇ダメ~」と判断されました。理由は以下のとおりです。
・寝坊は、悪意や故意によるものではない。
・放送記者が寝坊したことが原因
・Xさんだけを責めるのは酷
・Xさんは謝罪している
・寝坊による放送の空白時間はさほど長くない
・会社は早朝のニュース放送で万全を期すべための措置も何ら講じていなかった
・これまでXさんにチョンボ歴がない
・普段の勤務状況もそれほど悪くない
・第2チョンボの放送記者には【けん責】処分が出されただけ
・この会社では放送事故を理由に解雇されたケースがない
解雇って、そんな簡単にOKにはなりません。現在は以下の条文があります。
労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
ささいなチョンボで解雇しても裁判所は「解雇ダメ!権利濫用だ」と判断します。今回の寝坊もそのように判断されました。別の裁判例も紹介しますね。
解雇ダメ!となった例
まずは「このチョンボで解雇はダメ」と判断されたケース。
■ 取引先に「アホバカCEO」とメール送信。裁判所はザックリ「OKな上司批判だね」「アホバカCEOかぁ~、たしかに言い過ぎだけど、これで解雇しちゃダメ」と判断
■ 旅費を不正請求した事件。不正っぷりは以下のとおり。
・車で出張したけど交通費を請求しちゃえ!
・クオカードつきの宿泊プランにしてクオカード分も請求しちゃえ!
・駐車場代つきの宿泊プランにして駐車場代も請求しちゃえ!
解雇OKとなった例
お次は「こんなチョンボし散らかしてたら解雇OKだ!」と判断されたケース。
■ 会社の書式を改造
ほか、
・部下のミスを隠ぺい
・社内調査でもウソをつく
・別の部下をボコボコにする
さいごに
相当イタい方なら解雇OKになりますが、ささいなチョンボや能力不足程度で解雇がOKになることはありません(ただ、寝坊も繰り返すと危険度が上がっていきます)。
解雇を匂わされている方は労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。
労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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