裁判所の判断は?
▼ 6名(ちょっとやりすぎた人たち)
裁判所
「退職金は請求できないです」
ーーー 理由はどんなところにあるのでしょうか?
裁判所
「まず、懲戒解雇はOKです」
〈理由〉
・会社に連絡なく一斉に退職して、本社や支店の機能を麻痺させた
・引き継ぎをしていない
・引き継ぎしないことで大混乱に陥ることを認識していた
・会社に無断で在庫商品を運び出す
・顧客データなどをフロッピーに写して持ち出す
・PC内のデータを削除
・会社に多大な損害が出ているなど
辞める時に大暴れしちゃったようですね。
ーーー 懲戒解雇がOKだから退職金を請求できないってことですか?
裁判所
「いや。それはかわいそうです。懲戒解雇されたとしても【それまでの勤続の功を抹消してしまうほど著しく信義に反する行為をした】とはいえないときは退職金をもらえます」
ーーー ?・・・林さん、どういうことですか?
林
「退職金は『社員さん今まであざす!』的なニュアンスがあります。なので懲戒解雇されたとしてもそれに加えて『このクソやろーが!8往復ビンタだ!』みたいなチョー不義理野郎といえるときだけ退職金がもらえないのです」
ーーー 裁判所さん、今回はどうですか?チョー不義理ですか?
裁判所
「チョー不義理ですね(それまでの勤続の功を抹消してしまうほど著しく信義に反する行為といえる)」
てなわけで上の6名は退職金を請求できず。
▼ 3名(そこまでやりすぎてない人たち)
会社
「業務を引き継ぎしなかったので退職金を支払わなくていいはずです」
「退職金規程に書いているので」
裁判所
「いや、払え。引き継ぎしなかったとはいえないから」
〈理由〉
・退職したいと申し出てから退職日までの間、会社に対して引き継ぎ指示を求めたが会社から具体的な指示がなかった
・業務についての質問に回答するなど協力していた
この3名は、そこまで大暴れしなかったようです。
ーーー もし、引き継ぎしてなかったとしたら、どうですか?
裁判所
「そうだとしても退職金は払わないとダメですね」
ーーー なぜですか?
裁判所
「先ほども述べましたが、それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの……」
林
「チョー不義理じゃないからだYo!」
裁判所
「さえぎったので退廷を命じます」
林
「うわ〜!(警備員2人につまみだされる)」
はぁ…はぁ…。
てなわけで、裁判所は3名については退職金の支払いを命じました。
G 約63万円
H 約108万円
I 約53万円
引き継ぎが不十分くらいで「退職金は払わん!」は通らないと思います。
ポイント
何かチョンボがあったとき、退職金を請求できるかどうかのラインは【チョー不義理かどうか(それまでの勤続の功を抹消してしまうほど著しく信義に反する行為をしたかどうか)】です。
懲戒解雇=退職金をもらえない【ではない】ので頭の片隅に置いといて下さいね。
会社ブチギレ裁判例
2つどうぞ。会社が「退職金は払わん!」とブチギレたんですが、裁判所は「払え〜」と命じています。
▼ 同業他社に転職
会社がブチギレて退職金3000万円を払わなかったのですが、社員が勝ってます。
https://dime.jp/genre/1501562/
▼ 従業員を引き抜いて新会社を設立
こちらも会社がブチギレてます。「従業員を40人も引き抜いて、新会社を設立しやがって!」とブチギレて、首謀者の7人を懲戒解雇して退職金を払わなかったんです。これも社員が勝ってます。
https://dime.jp/genre/1501574/
さいごに
▼ 相談するところ
もし「退職金でないよ」と言われている方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。
労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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