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同業他社に転職したら退職金なし!?競業避止義務の社内規則が無効とされた裁判事例

2022.11.22

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

今回は、裁判例のザックリ解説です。

会社が

「チミ、同業他社に転職したよね」
「だから、退職金3000万円・・・払わないから!

いやいや!払えよ!

ってことで、退職したXさんは裁判を起こしました。

その結果、退職金約3000万円をゲットしました。
(アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー事件:東京地裁 H24.7.20)

以下、事件を解説します。

バトルの当事者

会社は、外資系の生命保険会社です。

日本支店としてアリコジャパンがあります。

Xさんは、平成11年11月に、関連会社に入社しました。

その後、順調に出世して、平成16年7月に、アリコジャパンの金融法人部の本部長と執行役員に就任しました。

Xさんは、主にバンクアシュアランス業務(金融機関など募集代理による販売)を行っていました。

退職金に関する合意

平成17年3月。

会社とXさんは、裁判で問題となった合意をします。

退職金に関する合意です。

その合意には、以下の内容が含まれていました。

・退職後、2年以内に、競合他社に就職した時は、退職金を支払わない
・2年を経過したら退職金を支払う

英文で書かれていたので、この【競合他社】の文言の解釈について争われてます。

裁判所は、

「バンクアシュアランス業務を行う生命保険会社への転職が禁止されていた」と認定。

ざっくばらんに言えば「制限対象がちょっと広すぎじゃねーか」という認定です。

例えるなら、コーヒー専門店を辞める人に対して、2年間はコーヒー専門店に就職したら退職金を払わないよ、というのは100歩譲っていいとしても、「コーヒーを提供している飲食店に就職しちゃダメ」は制限かけすぎだろ、みたいなものです。

退職

平成21年6月30日。

Xさんは退職しました。

再就職

その翌日。

Xさんは、A生命保険会社に就職しました。

そして、取締役執行役員副社長に就任しました。

会社が激怒

このXさんの転職に、前の会社がブチギレました!

「2年以内に競合他社に就職したら退職金はらわないって約束してるよね」
「だから、退職金を払いません!」

と通知。

Xさんは納得できず、提訴!

裁判所の判断

Xさんの勝訴です!

裁判所は「退職金を払いなさい」との判決を出しました。

「競業避止義務の合意は無効だ」
「だから退職金不支給条項も無効だ」

と判断しました。

と示されました。

少し詳しく解説します。

大原則として、

労働者には職業選択の自由が保証されています(憲法22条1項)

どこで何をしようが自由なのが原則です。

なので、競合他社への転職を制限するのであれば、

合理的な理由が必要なんです。

この考えをベースにして、裁判所は以下の判断基準を示しました。

6要素を考慮して合理的かどうかを判断すると。

使用者と労働者の間に、労働者の退職後の競業についてこれを避止すべき義務を定める合意があったとしても、①使用者の正当な利益の保護を目的とすること、②労働者の退職前の地位、③競業が禁止される業務、④期間、地域の範囲、⑤使用者による代替措置の有無等の⑥諸事情を考慮し、その合意が合理性を欠き、労働者の職業選択の自由を不当に害するものであると判断される場合には、公序良俗に反するものとして無効となると解される

以下、6要素について裁判所がどう判断したのか、ザックリ解説します。

細部が気になる方は〈アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー事件〉で検索してみて下さい。

▼ 1. 会社の目的

競業制限は、会社の正当な利益の保護を図るものとは言えない
〈理由〉
・ノウハウの流出を避ける意図があったんだろうけど、Xさんの交渉術や手腕などのノウハウの流出を禁止することは正当な目的とはいえない
・顧客情報の流出を避ける意図があったんだろうけど、協業制限という手段は、やりすぎ

▼ 2. Xさんの退職前の地位

執行役員であり、地位が相当高度であった。
しかし、保険商品の営業は透明性が高く、秘密性が低い。
Xさんが、それ以上に機密性のある情報に触れることはできなかった。

▼ 3. 競業が禁止される業務の範囲

広すぎ!
バンクアシュアランス業務を行う生命保険会社への転職が禁止されていた
原告が会社で獲得したノウハウはバンクアシュアランス業務の営業に関するものが主。
これまで生命保険会社に勤めてきた者に対する転職制限としては広すぎる

▼ 4. 期間、地域の範囲

・期間
 2年は長すぎる。保険商品は次々と販売されている。
・地域
 限定なしなので広すぎ。

▼ 5. 代償措置の有無

たしかに、給料は相当高額だった(月額131万7000円)
しかし、競業制限の代償措置として、給料を上げるなど、していない。

▼ 6. その他の事情

・退職金は、賃金の後払い的な側面があった
  賃金を部下よりも低く設定するが、退職金で調整するとの両者認識があった。
・会社が受けた損害の程度
  会社とA社のバンクアシュアランス業務は、ほぼ競合していない。
  両社の取扱商品の顧客層も異なる
  XさんがA社に転職したからといって、顧客がA社に変更するとは考えられない
   (バンクアシュアランス業務は、銀行を通した顧客への販売だから)
   → 実害が生じておらず、実害が生じるおそれもない。
・Xさんが転職した目的
  たしかに、翌日転職している。
  しかし、副社長として入社。
  業務全般の統括。バンクアシュアランス業務に携わっていない。
  会社に損害を与える意図はなかったといえる。

裁判所は、以上をもろもろ考慮し、

・ 競業避止義務を定める合意は合理性がない
・ Xさんの職業選択の自由を不当に害する
・ 公序良俗に反し無効。
・ 退職金不支給条項も無効
・ 退職金3000万円を支払えー!

と判断しました。

まとめ

今回は、転職制限が公序良俗違反となり、退職金請求が認められた事件について解説しました。

もちろん、合理的と判断された事例もあります。

気になる方は、フォセコ・ジャパン事件で検索してみてください。

退職後、競合行為の差し止めが認められた事件です。

裁判ではザックリ「その制限、合理的なの?」が争われます。

会社担当者の方は、6要素をチェックしてみてください。

社員の方は「この制限、不合理じゃねーか?」と思えば、

社外の労働組合か弁護士に相談してみましょう。

今回は以上です。

では、また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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