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丁寧すぎるのは逆効果!相手との距離感をほどよく保つ敬語の使い方

2022.08.04

■連載/あるあるビジネス処方箋

4回シリーズで、ビジネスの現場で使う敬語の使い方をテーマに、ベテランのアナウンサーに話をうかがった内容を紹介する。今回は、その3回目となる。

(その1)は、こちらから
(その2)は、こちらから

アナウンサーは、梶原しげるさんと原田裕見子さん。お二人は、オンライン話し方教室・ツタバナの講師でもある。

梶原しげるさん
文化放送を経て、1991年からフリーアナウンサーに。報道からバラエティ番組まで数多くの番組に司会などとして出演。企業や公的機関、団体での話し方セミナーや研修の講師を務める。全国での講演も多数。日本語検定委員会審議委員、日本語大賞審査委員。オンライン話し方教室・ツタバナの主催者であり、塾長。語学に堪能で、英語、北京語による司会もする。東京成徳大学客員教授。

原田裕見子さん
静岡朝日テレビにアナウンサーとして13年間勤務。フリーアナウンサーとして東海ラジオやCBCラジオでアシスタントなどを務め、現在は企業研修・講演・セミナー、経営者へのスピーチレッスン、企業や各種団体のオンラインセミナーや動画配信のアドバイザーとして、「伝わる話し方」を伝授している。

過剰すぎる敬語にも注意が必要

Q、敬語を使う時に、特に気をつけるのはどのようなことでしょうか?

原田:敬語を使う際には、丁寧すぎることにも配慮する必要があります。たとえば、「お客様から、お車にお帽子を置き忘れたとご連絡いただきました」といったものです。

これは、美化語の「お」を3つの名詞につけてしまっているために、ゴテゴテした表現になっています。次で十分ですし、この方がスッキリしますね。

「お客様から、帽子を車の中に忘れたようだと連絡をいただきました」

そしてこれも、丁寧すぎますね。

「こちらにお名前様をお書きいただけますでしょうか?」

お客様に丁重に接しようという気持ちは伝わりますが、名詞の「名前」に「様」はつけませんね。正しく伝えるとこうなります。

「こちらにお客様の氏名をお書きいただけますか?」

梶原:相手を敬うという意味合いで、「お名前様」と「お」をつけたくなる思いはわからないでもないんですよね。

原田:梶原さんは著書「すべらない敬語」で、アナウンサーは「必要以上にへりくだらず、必要以上に持ちあげすぎずに敬語を使う」ことで、相手との立場や距離感を程よく調整することを説いていますよね。

梶原:その「相手との立場や距離感を程よく調整する」が、肝(きも)なのです。

原田:実は、私も若い頃に失敗談があるんです。「失礼がないように」「間違いがないように」「丁寧でなければ」と考え過ぎて敬語が過剰になっていることがありました。「慇懃無礼でむしろ失礼」と印象を悪くしたり、うまく相手と距離を取れなかった場面もたくさんあったと思います。

梶原:言葉は、まさに使いようです。その時の状況にもっともフィットするのは何だろうかと考えることが必要なのですが、これは難しい。その場面に応じて適切な言葉を引っ張り出すのには、年季が必要です。

いろいろな場面に応じて適切な敬語を使うのは、相当な経験と学習量が必要になります。それが、アナウンサーのようなプロな話し手に必要な技と言えるでしょうね。

原田:おっしゃる通りです。

梶原:日本語の使い方は、その場に合わせることがものすごく大事です。特に敬語を使う時は、ある意味で恐ろしい。敬語を使う人のバックグラウンドが見える場合があります。どういう人生を歩んできて、どんな生活をしているのかがわかってしまいます。

吉田:言葉からはその人の基礎学力、教養や教育、家庭のあり方などが見えてきますね。私も気をつけないと…。もう、遅いかな。

梶原:社会人になって経験が浅いうちは、「こういう時にはこの言葉」「あの場合にはこの言葉」とマニュアル的に決めておくことも必要かもしれませんね。

原田:自分よりも少し先輩で、「この人いいな」と憧れるような人の言葉を真似するのがいいと思います。私は、憧れの先輩アナウンサーを見て研究しました。この方は、こういう場面でこの敬語を使うんだなぁと。ある時は「わかりました」と答え、ある時には軽いノリで話す時もあります。また、ある時には「かしこまりました」とその場に応じてうまく使い分けていて、「なるほど、こういうことか」とわかってくるのです。

梶原:実践で学んで身につけることが、いいんでしょうね。

吉田:憧れるような上司も先輩もいなかったな…。

次回は最終回。

文/吉田典史

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