【極上ビールを求めて】カクテル感覚で楽しめる、フルーツビール
全世界で、約150種類以上もあるというビール。その中から、自分の好みにマッチした最高の1杯を選ぶ目安としてビアジャーナリストのくっくショーヘイさんが作成したのが、「ビールチャート」(下)だ。
好みのビールのキャラクターがわかる「ビールチャート」※くっくショーヘイさん作成
このビールチャートでは、150種類以上もあるビールを大きく8種類のキャラクターに分類している。
これまで、そのキャラクターの①~⑤までお話をうかがってきた。
↓
①日本の大手ビールメーカーの代表銘柄のほとんどをしめる「淡色ラガー」
②香りが芳醇な「淡色エール」
③苦み控えめでまろやかな「白ビール」
④麦の香ばしい甘みを感じる「琥珀色ビール」
⑤香ばしさと苦み、深いコクが堪能できる「黒ビール」
今回は6番目の「フルーツビール」についてお聞きする。
お話を聞いた方:くっくショーヘイ(佐藤 翔平)さん
フードペアリングインストラクター/ビアソムリエ/ビアジャーナリスト
1989年生まれ、宮城県出身。岩手大学卒業。5000種以上のビールをテイスティングしてすべて記録をつけ、フードペアリングを中心とした執筆活動を行っている。日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として国際ビアコンペでの審査も行う。保有資格に、ソムリエ、SAKE DIPLOMA、酒匠、唎酒師、焼酎唎酒師、ウイスキーエキスパート、テキーラ・マエストロなど。
2022年3月22日に発売、即Amazonビール本部門1位を獲得した「うまいビールが飲みたい!最高の一杯を見つけるためのメソッド」(くっくショーヘイ著/リトルモア)
フルーツの個性とビールの個性のかけあわせが楽しい!「フルーツビール」
――チャートでいくと、「欲しているのは甘みor苦み」で「甘み」を選んだ人へのおすすめが「フルーツビール」ですよね。確かに、「ビールは苦手だけど、フルーツビールなら飲める」という人、特に女性に多い気がします。
ショーヘイさん フルーツビールには、醸造時にフルーツを漬け込んだり、果汁やピューレを入れたりと様々な造り方があります。ビールにフルーツの甘味や酸味が加わったものが多いので、普段はビールよりも甘いカクテルを好まれる方にもおすすめのビールですよ。
――ということは、フルーツビール=甘いカクテルのような味、と覚えておけばいいんでしょうか?
ショーヘイさん そうとは限りません。最近は柑橘類を使った甘くないフルーツビールも増えていますし、同じフルーツを使用していても、ベースとなるビールが違うと味わいが変わります。でもそれもフルーツビールの楽しさのひとつ。例えば爽やかな柑橘類×キレの良いラガーの組み合わせはこれからの季節にぴったりですし、イチゴ×黒ビールの組み合わせはチョコレートケーキにも通じる魅力的な味わいがあります。フルーツの個性とビールの個性を上手にかけあわせた、魅力的なビールがたくさんありますよ!
スーパーやコンビニでも入手しやすくなってきた「フルーツビール」
――「フルーツビール」は8種類の中ではどちらかというと「専門店によく置いている」カテゴリーですが(下の図参照)、名前だけでもパッとわかるし、ラベルにフルーツの絵が描かれていることが多いので、初心者でもわりと見つけやすいですよね。じつはうちの近所にあるスーパーのビール売り場をダメもとで探してみたんですが、「イトーヨーカドー」では、フルーツビール2種類を発見しました!
8種類のキャラクターの特徴は、大まかにいうとこういうイメージ
左:「リンデマンスビール<ピーチ>(350ml)」(税込み351円) 右:「軽井沢 香りのクラフト<柚子>(350ml)」(税込み272円) どちらも「イトーヨーカドー綱島店」で購入
ショーヘイさん 桃やリンゴフレーバーなどがある「リンデマンス シリーズ」はフルーツビールの代表格なので、比較的、置いているお店が多いかもしれません。「Y.MARKET BREWING イエロースカイペールエール」などの「柚子ビール」なども、高級志向のスーパーで見かけることがあります。「ナチュラルローソン」などではお店によっては、「北海道麦酒醸造」の「チエリー&ベリーエール」、白ブドウ「ナイアガラ」を使った「ナイアガラ―エール」などのフルーツビールを取り扱っているお店もあるようです。
「リンデマンスビール<ピーチ>」は、桃のカクテルのように濃厚な果汁感!
――「リンデマンスビール<ピーチ>」を飲んでみて、驚きました!グラスに注いでいる時から、桃の香りがふんわり広がって、‟これがビール?”とびっくり。飲んだらまさに、カクテルバーで飲む桃のカクテルの味わいです。これ、ビールだと全く気がつかない人もいそう。でも、最後に残る余韻の中にビールがあるんですよね。桃とビールがこんなに合うとは驚きです…!
ショーヘイさん リンデマンス社は200年近くにも渡って「ランビック」というベルギー伝統のビールを造っている会社です。「ランビック」は、野生酵母を使った強い酸味と独特の風味が特徴です。
――そうか、桃の果汁だけだとネクターみたいに甘くなりすぎるけど、「ランビック」特有の酸味が加わっているから、すっきり飲みやすい味わいになっているんですね。
ショーヘイさん その通り。桃の華やかな甘さとランビック特有の酸味のバランスが取れたビールですよね。このほかにも様々なフルーツを使った「フルーツランビック」があって、上記のような甘口タイプから、フルーツの香りのついた辛口のシャンパンみたいなものまであるんです。後者であれば「カンティヨン・ロゼ・ガンブリヌス」や「ブーン・クリーク」、「オード クエッチ・ティルカン ア ラシエンヌ」などがクラフトビール専門店で購入できますよ。
原料の最初に「もも果汁」が記載されているので、果汁の比率が高いことがわかる
――ラベルを見ると「もも果汁」が最初に来ているから、桃果汁のほうがビールより割合が多いということですよね。これは桃好きな方なら、絶対にハマる味!
ショーヘイさん 桃を使ったフルーツビールはほかにも、「桃ヴァイツェン」(箕面ビール)、「桃のラガー」(福島路ビール)などがあります。同じ桃果汁入りでも、ベースになるビールの違いで味わいが変わりますよ。
最近増えてきている、柚子を使ったフルーツビール
――軽井沢ブルナリーが造っている「軽井沢 香りのクラフト 柚子」も飲んでみました。普通のビールには無い、突き抜けるようなすっきりした爽やかな味わい!これは、夏の暑い時にぴったりですね。「リンデマンス」に比べるとビール感がありますが、ビール特有の苦みは感じないので、ビール好きな人、苦手な人、どちらも楽しめそうです。
ショーヘイさん 柚子を使ったフルーツビールは最近、すごく増えてきていますね。ざっとあげるだけでも前述の「Y.MARKET BREWING イエロースカイペールエール」(おかだや)、「常陸野ネストビール ゆずラガー」(木内酒造)、「初陣 柚子ブロンド」(リオ・ブリューイング)、「湯桶 ゆずエール」(Oriental Brewing)、「J-CRAFT 柚子ホワイト」(三菱食品)などがあります。中でも大人気で、発売されるとすぐにファンが殺到する銘柄が、大阪・箕面ビールの「ゆずホ和イト」。白ビールに柚子の風味を乗せたものです。
主原料はホップと米なので、酒税法上は「発泡酒」に分類。国産柚子の果汁と果皮を贅沢に加えている
――「ゆずホ和イト」、覚えておかなくては。メモメモ。
ショーヘイさん 柚子は中国原産の植物ですが、今は生産量・消費量ともに日本が世界一。柚子の鮮烈でリフレッシングな香りはビールによく合うので、グローバルスタンダードになって欲しいですね。
ペアリング最後は、「対比」の法則
――これまで、ビールをより美味しく味わうペアリングの法則として、「一緒」の法則、「置換」の法則、「味変の法則」を教えていただきました。「軽井沢 香りのクラフト 柚子」ホームページの商品説明には、「どんな料理にも合いますが、湯豆腐や温かいお蕎麦など繊細な和食との相性が良いです」と書いてあります。これはまさに、ペアリングの「置換」の法則ですよね。
ショーヘイさん その通りです。柚子ポン酢とこのビールを置き換えると「置換」の法則で、湯豆腐もこのビールもより美味しく感じますし、柚子切り蕎麦とペアリングすると「一緒」の法則ですね。ほかにはしめ鯖やちりめん山椒、ウナギのかば焼きなどがおすすめです。
――しめ鯖には柚子を合わせて生臭みを消しますから、「置換」の法則ですね。4つ目、最後の法則は何でしょう?
ショーヘイさん 「対比」の法則です。似ている味わいの食品と合わせる「一緒」の法則は、まとまりのある味に美味しさを感じる人向けのペアリングですが、「まとまりすぎた味は面白みがない」と感じる人もいますよね。そういう人は、あえてビールの個性と違う個性を合わせてみるのもいいでしょう。
――例えば、今回のフルーツビールを「対比」の法則でペアリングするとしたら、どういう食品でしょう?
ショーヘイさん 桃の甘いフルーツビールなら、ミントなどのハーブ料理。清涼感のあるミントと合わせると、フルーツビールのフルーティな甘さや複雑な香りが引き立ちますし、ミントの清涼感も際立ちます。
――ありがとうございます!次は「長熟・濃厚系ビール」ですね。よろしくお願いいたします。
◎ビール好きに朗報です!
くっくショーヘイさんが「最高に美味しい家飲み」を伝授してくれるオンラインイベントを開催!
・ひと手間でビールが劇的においしくなる!「うまい」飲み方
・ずぼらでもできる! コンビニOKのお手軽ペアリング
■『うまいビールが飲みたい!』刊行記念オンラインイベント
5月14日(土)15時〜17時
https://online.maruzenjunkudo.co.jp/collections/j70019-220514
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・イベント終了後1週間のアーカイブで視聴できます。
・書籍付きチケットもあります。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/くっくショーヘイさん
https://www.jbja.jp/archives/author/sato
https://www.instagram.com/shoheisatoh/?hl=ja