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なぜ、新卒のエントリー者数が増えるほど会社は強くなるのか?

2020.10.18

■連載/あるあるビジネス処方箋

本コラムでは最近、新卒採用をテーマにした内容を取り上げてきた。「なぜ、一流企業やメガベンチャーの新卒採用は優れているのか?」「なぜ、一流企業やメガベンチャーは「通年採用」に消極的なのか?」「なぜ、社員1名を採用するのに応募者1名だけではダメなのか?」などだ。

今回は、私が30年前後の取材で接した各企業の採用担当者(責任者を含む)から聞いてきたことをもとに、エントリー者数を基準にグループに分けてみた。いずれも「エントリー」とは新卒採用をする中小企業(正社員数300人以下)、ベンチャー企業、中堅企業(正社員数500~999人以下)、大企業(正社員数1000以上)の総合職で、技術職や専門職は含まない。なお、この場合の「エントリー者数」とは、本エントリー(正式に採用試験の受験を希望し、手続きをする)した学生の数を意味する。

100人以下

このクラスは、そのほとんどが学生の間では知名度が低い中小企業やベンチャー企業である。中堅企業や大企業では、100人以下はまず聞かない。

1回の募集で100人を集めることは、まずできない。したがって例えば3∼9月までに一定のスパン(2~3週間)で5~10回と会社説明会を開催し、その都度募集をする。説明会には、1回につき数人から10人程が参加する。エントリー者がいれば、後日、面接試験を実施している。エントリー者が、ゼロの場合もある。説明会を繰り返しても、100人に達しない年もあるという。

エントリー者全員を大卒にそろえるのは難しい。入学難易度は、偏差値ランキングで言えば中堅以下が9割以上を占める。専門学校卒も相当数いる。大卒であっても、既卒で20代後半まで含めるケースがある。採用責任者の3人に1人が、「(大学の)入学難易度がもう少し上の学生が来てほしい」「(エントリー者の)数を増やしたい」と取材時に話す。

総務部はあっても、人事部はなく、母集団形成をする採用担当者がいないケースが多い。この課題を克服する前に、新卒採用の継続を断念するケースが半数以上を占める。数年ごとに新卒採用をする場合もあるが、毎回、100人以下となり、いつしか新卒採用をしないようになり、中途採用のみとなる場合が目立つ。入社3年以内のみならず、社員全員の定着率は概して低く、辞めていく人が多い。定着させる仕組みが十分ではないからだ。

私が取材で接する著名な人事コンサルタントらは、「定着の仕組みがないのに、新卒者を雇うことは本来、問題がある」と指摘する。廃業や倒産になるケースも少なくない。私が読者諸氏に助言するならば、エントリーには慎重であったほうがいいと思う。

101人~500人

新卒採用をする企業の9割程が、このクラスに入ると思われる。中小企業やベンチャー企業のほか、知名度の低い中堅企業や大企業のグループ社が増えてくる。ごく一部に、業界中位から下位の大企業も入る。ただし、その数は少ない。

ここで、エントリー者を全員、大卒にそろえることができるようになる。偏差値ランキングで言えば、中堅以下が6~8割を占め、上位校は1~2割になるようだ。上位校とは、私立では、早稲田、慶応義塾、上智、国際基督教、明治、立教、同志社などのようだ。ただし、上位校の学生は他社への入社を「本命」としていて、「滑り止め」「リハーサル」「模擬試験」と受け止めているケースが多いという。

2006~2010年にこのクラスの中堅企業、ベンチャー企業を10数社取材した際に痛感したが、20代の定着率はすこぶる低い。入社3年以内に同じ年に入社した社員のうち、半数が辞める場合もあった。中には、10人程全員が退職するケースがある。定着させる仕組みが十分には機能していない可能性が高い傾向がある。

管理職や役員の部下育成力にも課題が少なくない。人事部はなく、1人の採用責任者がいるとはいえ、何をしているのか、周囲にはわからない。会社全体で取り組む態勢にはなっていないようだ。私が読者諸氏に助言するならば、やはり、エントリーには慎重であったほうがいいと思う。

501~999人

採用責任者の3人に1人が、「(エントリー者数に)ある程度は満足している」と取材時に答える。会社として新卒採用をする意志や考えが明確で、採用担当者を数人置くケースが増えてくる。ただし、他の仕事との兼務が多く、数千人のエントリー者を集める企業と比べると、見劣りはする。20代の定着率は、多少よくなる。入社3年以内の離職率も下がる傾向にある。

知名度の低い中小企業やベンチャー企業は少なくなる。社名は聞いたことがあるような中堅企業、ベンチャー企業が増えてくる。業界下位から中位の大企業も多少増えてくる。

エントリーする学生は全員が大卒で、中堅から上位にかけての大学が半数を占める。中堅以下が依然として3∼4割を占める。

1000~5000人

採用責任者のほぼ全員が、「1000人を超えると、(偏差値ランキングの)上位校が増えてくる。多い年は、6割になる。学生の質が大きく変わる」と話す。例えば、「エントリーシートの内容が深くなる」「面接のやりとりが、ラリーとして続く」「打てば響く学生が増えてくる」などだ。大きな理由の1つは、小中学校の国語の3領域(「読むこと」「話すこと・聞くこと」「書くこと」)の力が、平均的な学生よりも相対的に高い学生が増えるからだと思われる。

ただし、同じ大学であっても、一般入試や附属、推薦、AOなど入学の仕方で学生の質は大きく異なり、国立大学ではあまり見られない傾向だという。

読者諸氏が上位校の中でもさらに上位の学生ならば、このクラスよりも上の企業にエントリーすることを勧めたい。定着の仕組みがある程度整っているので、安心して仕事を覚えることができる可能性が高くなる。

エントリー者が3000人を突破すると、ほぼ毎年、上位校が半数を超えるという。このクラスに達する企業は各業界で売上や経常利益、正社員数、ブランド、知名度などの総合力が上位5∼6番以内に入るケースが大半を占める。ベンチャー企業の中でも、売上や経常利益、正社員数、ブランド、知名度が上位30番程以内に入る、いわゆるメガベンチャーの多くもこの範疇に入る。

私が2009年~10年に取材したメガベンチャー2社の採用責任者は、「3500人を超えた頃(05年~08年前後)に、次のように答えていた。

・エントリー者の半数から6割を上位校が占めるようになった。
・各部署の管理職から、新入社員の質が上がったと言われ始めた。
・この時期から、社員の質を全般的に底上げができるようになった。

なお、5000人以上は全業界でおそらく、50~80社だと思われる。いわゆる母集団形成に成功している超ブランド企業である。そのほとんどが、一流大企業やメガベンチャーだ。自信がある学生は、必ずエントリーをしたほうがいい。定着の仕組みが機能しているから、育成の仕組みも整いやすい。定着率が低い中で、育成はまずできないのだ。一部の例外もあるのだろうが、優秀な社員は同業他社に比べて多いはずだ。

私の印象で言えば、5000人以上の会社員とそれ以下、特に999人以下の会社員の仕事力を比較すると、言葉を失うような差があることが多い。私が深く関わる特に出版、新聞、IT、教育、メーカー、商社、医療、介護などでよく見られる光景である。

エントリー者数が5000人以上の企業の採用は、本コラムの「なぜ、一流企業やメガベンチャーの新卒採用は優れているのか?」「なぜ、一流企業やメガベンチャーは「通年採用」に消極的なのか?」で紹介した。ぜひ、ご覧いただきたい。学生に耳障りがいいことや事実誤認の内容を伝える識者やメディアに感化され、判断を誤ってほしくないと切に願っている。

文/吉田典史

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