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コロナが明けても飲食店が売り上げの巻き返しを期待できない理由

2020.09.09

客足が戻るだけでは、安心できないわけ

 先日、ある著名観光地一帯に店舗を展開する和菓子店の経営者から、コロナ禍での奮闘のお話をうかがった。そこで印象深かったのは、4月からの緊急事態宣言下、全店を閉め、その後営業を再開したときのお話。一気に客足が戻ってきた店とそうでない店が大きく分かれたというのだ。

 その違いを分析してみると、戻ってきた店は繰り返し買いに来てくれる地元の方々が多くいる店。そうでない店は、主にその日限りの観光客がメインの店だった。もちろん、同店が立地しているのは著名な観光地。同社自体が有名な地元ブランドであり、観光客のお土産需要も大きい。「その日限りの観光客がメインの店」が悪いわけではない。

 しかし、コロナである。この4月、5月、彼の言葉を借りれば、「人通りは一気に消えた」。6月以降もその状況は、大きくは変わっていない。そんななかで営業を再開しても、客足は戻らない。しかし、繰り返し買いに来てくれる地元のお客さんがいる店は戻っている。

 実は彼自身、今回のことがあるまで、この違いに気づかなかった、目を向けていなかったと言うが、この違いが今日の商売で最も重要な違いだ。そして今、この違いの重大さに気づいた同社は、地元のお客さんをさらに強固に“顧客化”するために、顧客リスト作りとその整備、顧客へのこまめなアプローチに注力している。

 もし、これを読んでいるあなたがお店を経営していて、幸いなことに客足が戻ってきているとすれば、それは喜ばしいことだ。しかし、安心はできない。それは、この和菓子店の観光客がメインの店がそうだったように、人通りが消えたとき、打つ手がないかもしれないからである。

観光客がゼロになっても売上を狙い通りに作る

 では、顧客化を進めておくとどう安心できるのか。参考になる事例がある。ある味噌蔵が経営する直売店の実例だ。同店の来店客のおおまかな属性は、観光客4割、地元客6割。こちらも、先の店同様に、コロナ情勢が色濃くなってきた頃から、観光客はゼロに。

 そこで生きたのが顧客リストだ。同社はすでに顧客化に取り組んでいたゆえ、4000名の顧客リストがあった。単なる住所録ではなく、普段から絆を育む活動をしている、われわれでいう“絆顧客”のリストである。このリストに様々な働きかけを行うと、結果は出た。従来売上の4割を占める観光客分がゼロになったにも関わらず、この月、前年比106%で着地できたのだった。

 それだけでも素晴らしい成果だが、ここでさらにお伝えしたいのは、次のことだ。同店では今回、4000名の顧客リストに対してダイレクトメール(以下、DM)を打ったのだが、それを一気には行わなかった。毎週一定数のDMを分散して送っていったのである。なぜそんなことをしたのか。それは、お客さん、従業員のためにも三密状態を作らないためだった。

 この考えに基づき、まずは4月中に一度テストDMを発送。そこでのDMの回収率やお客さんの買い上げ状況を見ながら、策を練っていった。社長は言う。

「店が混みすぎず、また暇にならないように、そして狙った売上が作れるように、発送枚数、DMの発送日、訴求すべき商品、店舗オペレーションを練り直し、本番に挑みました」

 顧客化を進め、顧客リストを整備し、絆を育んでおくと、このコロナ情勢下でもこれほどまで狙い通りに売上が創れる。しかも今回、DMを連発したわけでもなく、売上に対するDMの制作発送コストは約2%。今回の結果を受け、スタッフからも口々に「うちの店は会員さん(顧客)に支えられている」といった声が聞かれたという。

これこそが、コロナ時代に、サービス業が生き残る道

 コロナの時代、最も重要なことは“顧客化”だ。それは単に顧客リストを作るということでなく、お客さんとつながり、関係を強化し、ファン化していくことだ。それは、今回のコロナ禍に限らず、あなたの店や仕事を支えるものとなるだろう。

 佐賀県のあるたこ焼き屋では、度重なる災害にも関わらず、今なお営業できている。同店は、郊外の道路沿いにしばしば見かける独立店舗のお店だが、一昨年、豪雨災害により浸水した。そのとき、多くの顧客が駆けつけ、後片付けや清掃作業などさまざまに支援してくれ、早期の営業再開にこぎつけた。

 そして昨年の7月、二度目があった。店の半分ほどが水に浸かり、店内では冷蔵庫が浮いた。しかし顧客らは昨年も立ち上がった。一昨年も手伝ってくれた方々は要領も分かっており、今度はたったの5日間で営業再開に。

 ところが昨年、さらに三度目があり、復旧したばかりの同店は再び水没した。このときはさすがに心が折れそうになったと店主は言うが、顧客らは三度立ち上がった。今回はさらに迅速な復旧活動となり、なんと3日間で営業再開。その後も順調に営業を続けることができている。

 同店の例からは、客足が戻る・戻らないが議論の本質ではないことが分かる。戻るも戻らないもない。この店の復旧を待ち望み、実際に復旧に手を貸す顧客がこれだけいるのだから。そして、これが今日最も大切なことだ。顧客化を進め、こういった顧客を十分に保持しておくこと、そのための日々の活動。それこそが、コロナ時代において、サービス業が生き残り得る道なのである。

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文/小阪裕司(こさか・ゆうじ)

オラクルひと・しくみ研究所 代表/博士(情報学)。山口大学人文学部卒業。1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「感性」と「行動」を軸としたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県から約1500社が参加。2011年工学院大学大学院博士後期課程修了、博士(情報学)取得。著書は『価値創造の思考法』など計39冊。 公式サイトhttps://kosakayuji.com/

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