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「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、季節の変わり目に訪れるお彼岸。馴染み深い言葉だが、その時期はいつなのか、どのような意味があるを知っている人は少ないのではないだろうか。
そこで本記事では、お彼岸の時期などの基礎知識とお彼岸の時期に準備するもの、当日の過ごし方を解説する。
お彼岸とは
お彼岸は、節分と同じく特別な暦日である「雑節」の一つ。その名前は、仏教用語「波羅蜜(Pāramitā パーラミター)」の意訳である「至彼岸(とうひがん)」に由来する。
仏教では、”悟り”までに超えるべき煩悩、迷いは「川」に例えられ、その向こう岸に”涅槃(ねはん)”があるとされている。この”向こう岸”を「彼岸」と呼び、私たちが生きている世界をそれと区別して「此岸(しがん)」という。
お彼岸はどういう期間?
「亡くなった家族、ご先祖様は彼岸に渡っている」とされていることから、お彼岸の時期に供養を行う。太陽が真東から昇り真西に沈む春分の日、秋分の日は「彼岸と此岸が通じやすくなる」と言われており、この時期に先祖の冥福を祈るのが風習となった。民俗学では、日本古来の「太陽信仰」「祖霊信仰」とも関係しているという説がある。
ちなみに、お彼岸の概念は日本独自のもので、仏教の生まれたインド、隣国の中国の仏教においてはこのような風習はない。
お彼岸の時期はいつ?
お彼岸は、3月20日頃の「春分の日」と9月22日頃の「秋分の日」の2回存在する。それぞれ前後3日間合わせて7日間がお彼岸の期間だ。お彼岸の始まりを「彼岸入り」、春分の日・秋分の日当日を「中日」、お彼岸の終わりを「彼岸明け」と呼ぶ。
2024年(令和6年)のお彼岸の期間は、春が3月17日(日)~3月23日(土)、秋が9月19日(木)~9月25日(水)となる。ただし、春分の日・秋分の日は年によって異なるため、毎年同じ日がお彼岸になるわけではない。
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お盆とは何が違うの?
どちらも”お墓参りをする”という点は共通しているものの、お彼岸とお盆(8月中旬頃)は違うもの。
お盆は「あの世からご先祖様が帰ってくる期間」だが、お彼岸はそうではない。あくまでも先祖の供養を行い、自身も彼岸(悟りの境地)へ到達するための修行を行う日とされている。また、「お彼岸休み」が存在しない点もお盆との違いだ。
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お彼岸には何をする?準備するものは?
では、お彼岸の時期はどのように過ごせばいいのだろうか。お彼岸に準備するもの、当日に行うことを紹介しよう。
供養
お彼岸の時期は、多くのお寺で「お彼岸法要」「彼岸会」といった仏事を行う。合同供養の場合だけでなく、住職が各家庭をまわるケースも少なくない。いずれの場合も、3,000円から5,000円ほどの「お布施」を用意するのが一般的だ。お布施を渡す際は、表書きに「御布施」と書き、お盆に乗せるか服紗(ふくさ)に包むのがマナー。
お墓参り
お彼岸には、お墓参りに行くのが一般的。お墓は「此岸と彼岸の交流の場」とされており、お墓参りすることでご先祖様を偲び、感謝・敬いを伝える意味合いがあるようだ。
当日は墓石をきれいに洗い、お墓の周辺を掃除したら、線香を手向け手を合わせる。お墓参りには、「この時間」という決まった時間帯は存在しないが、午前中に行うのが一般的だ。お墓参りにいけない場合には、仏壇に手を合わせるだけでも良いとされる。
お供え
お墓参りの際には、落雁(らくがん)などのお菓子などのお供え物を用意しておく。特に、お彼岸の代表的なお供え物が「ぼたもち」「おはぎ」。「ぼたもち」と「おはぎ」が同じものだが、春のお彼岸には「ぼた(牡丹)もち」、秋のお彼岸には「おはぎ(萩)」と呼ぶ。
お供えしたぼたもち・おはぎ・お菓子は、その場で、もしくは持ち帰って食べると良いとされている。これは、お供えが「共に供する」と意味することに由来し、ご先祖様と分けあって食べることで供養になるそうだ。
また、親戚・知人などの別世帯に御供物を持っていく際は、のし紙をつけて渡すのがマナー。東日本では黒と白、西日本では黄色と白の水引き(結び切り)を使用することが多い。
お彼岸の花
「お墓参りといえば菊」とイメージしがちだが、お彼岸は菊以外の季節の花をお供えするのも良いとされている。春にはカーネーション、秋にはリンドウなどを供える方もいるようだ。故人が好きだった花をお供えするのも良い。
ただし、トゲのある花(バラなど)やツルのある花(スイートピーなど)は、仏教のマナーに反するため避けるようにしよう。
文/oki