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働き方改革といわれているのにほとんど進んでいない重要な2つの改革

2020.02.17

■あるあるビジネス処方箋

 働き方改革が進む。多くのマスメディアは好意的に報じるが、忘れてならないのは、改革すべき部分が手つかずの状況であることだ。それは、役員会や管理職のあり方である。

 まず紹介したいのが、1年半前に取材した著名な人事コンサルタントの次の言葉である。

「特に大企業などの社員は以前よりは残業時間が減り、有給休暇を申請しやすくなっている。しかし、実はこれらは、業務改善などの結果ではない。私たちがコンサルティングをしていると、多くの社員の仕事の進め方や量は大きくは変わっていないことに気がつく。社員に仕事を指示する側の役員や管理職の意識、考え方の改革が進んでいないのだ。特に役員の意識が変わっていかない点に問題がある」

 私の認識も、これに近い。そのうえで、私の考えを述べたい。特に次の2つの改革がほとんど進んでいないことが大きな問題なのだ。

役員のあり方

 日本企業のかねてからの課題が、役員会のあり方だ。たとえば、管理職から役員になる時の基準が公になる機会は少ない。それぞれの役員の役割とそれにともなう権限は曖昧である。下につくはずの執行役員との役割や権限と責任の違いも明確になっていない。なぜか、役員と執行役員が同じ仕事をしている場合すらある。

 取材経験をもとに言えば、ベテランの人事コンサルタントの中には、役員会を「未開の地」と指摘する人もいる。規模を問わず、多くの役員会の実態がオープンになる機会が少ないのだという。人事コンサルタントが、「透明性のある役員会にしましょう」とコンサルティングの場で誘っても、承諾する役員はほとんどいないようだ。「20年ほど前に比べると役員会の報酬規程は明確になったが、依然として未開の地であることに変わりはない」とも話す。

 成果主義を導入し、社員間の競争を煽りながら、一方で役員間の競争のあり方が曖昧のままでは社内で説得力を得るのは難しいのではないだろうか。むしろ、社内外の関係者の納得を高めるためにも、個々の役員の役割や権限と責任、業績評価、評価にともなう処遇、報酬規程、退任に至るプロセスをより厳密にして、早急に公にするべきと思う。「働き方改革」を「社員たちが働きやすい職場づくり」と定義づけるならば、役員会に大胆なメスを入れることが必要ではないか。

 人事コンサルタントの見立てでは、「役員たちが役員会の改革をいつまでもしないのは、既得権を奪われるから」といったものが多い。実際のところは役員しかわからないのだろうが、改革が遅々として進まないのは事実だ。

管理職のあり方

「未開の地」と言えば、管理職も同様と私は思う。これもかねてから、人事・労務の専門家が指摘していることだ。たとえば、昇格の基準が曖昧なのだ。「なぜ、あの人が課長になったのか」「どうして、あんな人が部長になったのか」と噂にならないだろうか。中には、本人すらなぜ、管理職になったのか、わかっていない場合すらある。人事部も正確に把握していないケースがあるという。

 これらは人事コンサルタントを取材すると、笑えぬ話として時折、聞く。中堅・大企業のコンサルティングで人事部の管理職に昇格の基準や実態を聞くと、要領を得ない回答が返ってくるケースが多いようだ。

 管理職を取り巻く環境は、過酷になっている。私が取材をしていると20年ほど前に比べて、中堅、大企業の管理職数は減っていることは間違いない。一方で、個々の管理職の仕事の量は増えている場合が多い。仕事の高度化・専門化にともなって難易度が上がり、求められるスキルのレベルは上がる。プレイヤーとして仕事をしつつ、部下の育成や部署の予算及び業績管理をするマネージャーもする。いわゆる、プレイングマネージャーだ。ここに、管理職の不満や労働過多、ストレスの一因があると言われる。おそらく、パワハラの問題が生じる1つの理由も、このあたりにあるのだと私は思う。

 管理職に求められるレベルが高くなっているのに、それにふさわしくない人まで昇格させている可能性が依然として高い。一方で働き方改革のもと、残業時間の削減が進む。さらには、数値目標のもと、女性の管理職を強引に増やそうとする動きも一部にはある。これでは、混乱が生じるのは避けられない。ところが、私が注意深く観察していると、働き方改革の報道では、昇格の基準を始め、管理職のあり方まで踏み込んでの議論を喚起しているケースは相当に少ない。大半の報道が働き方改革を、「残業時間が減る」「女性の管理職が増える」と好意的に捉え、そこで思考を停止しているものが目立つ。

 世の中のほとんどの改革は手をつけやすいところから始まるが、本丸には手をつけない場合が多い。それはなぜか…。このことをぜひ、考えていただきたい。会社や役員会、管理職への見方が変わるのかもしれないが、自分にとって不都合なことには頬かむりをする人は少なくないのだ。

文/吉田典史

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