私のコンプレックス
部下のTPMが設計のメンバーを束ね、開発を担ったが、紙を高速で機械に送る時に障害が出たり、開発は思うように進まない状況だった。技術的分野の専門知識が乏しい鈴木はトラブル解消について、「これはこうしたほうがいいのでは」とか、自分の知見で対応することできない。実はその点が彼女のコンプレックスでもあった。
会議の後に「これはどういう意味ですか」とか、技術者に質問しレクチャーを受けるが、「鈴木さんは文系だから、技術のことなんかわからんよ」、さすがにそんな露骨な言い方はされないが、そう思っている部下もいるかもしれない。しかし――
リーダーだからこそ、ブレイクスルーに向け発想し、実行できることがあるはずだ。社内的にはカラープリンターの開発が重要視されていて、モノクロに目が向きにくい状況ではある。が、社内でも業務用のモノクロプリンターの重要さは承知している。もっと周りを巻き込み、品質管理を確立できる仕組みが作れるのではないか。
「社内に『重要品質確立状況確認会』を設けたいと思うんです」彼女は部署内で技術者をまとめ、開発を司るTPMたちに提案した。
「達成を確実にするためにチェックする会ですね」
「そうです。開発系の部長や役員に状況を認識してもらい、品質簡易部門も巻き込んで、今やっている開発が正しいのか、このまま進めていいのか、品質を担保するためのアドバイスやコメントをもらいましょう」
専門知識は及ばない鈴木祥子さん、ならば技術者がいささか苦手とするコミュニケーション能力と、社内の部署を縦断できるリーダーの力で、部署のヘゲモニーを握ることを模索する。理科系の部下の上に立った文系の女性課長、彼女のリーダーとしての底力は後編で。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama