「働き方を変える」施策は成果が出にくいもの!?
総務省が旗を振り、7月末から9月上旬までテレワーク・デイズ2019が行なわれていました。これは東京五輪の開幕まで1年を切り、開催中の通勤ラッシュなどの混雑を緩和するために実施された実験キャンペーンです。2000以上の民間団体の60万人以上が在宅勤務などを試行しました。
都心部の通勤ラッシュ時に大きなスーツケースを持つ外国人観光客が電車に乗るのは、物理的に不可能な話です。そのため、今のうちに仮想の訓練をすることは有用でしょう。しかし、残念ながらその成果はあまり出ていませんでした。例えば、テレワーク・デイズがスタートした7月22日や〝コア日〟と定めた7月24日のことを挙げましょう。朝7時から9時に東京メトロの有楽町線と東西線、都営大江戸線に乗車しましたが、いつもどおりに混雑していたのです。
このような一大キャンペーンの実施は、各企業で行なわれている「働き方改革」の取り組みと似ています。「在宅勤務しよう」「早く帰ろう」「残業をなくそう」「休みを取ろう」というポスターの掲示を、多くの企業で見ます。確かに残業は少しずつ減っていて、在宅勤務の試行も徐々に進んではいます。しかし「うちの会社は働き方改革に成功しています!」と明言できる企業は少なく、何かモヤモヤ感じている企業が多いのはなぜでしょうか?
ゴールが決まっていない登山はムダ!
500社以上の企業を見てきて「働き方改革」がうまくいっていない企業の特徴は、①成功の定義が決まっていないこと、②働き方改革をすること自体が目的となっていること、の2つです。どの山の頂上を目指すのかが決まっていないのに山登りを始めても、頂上に着くことはありません。たまたまどこかの山頂に着いても、達成感は得られないでしょう。
また、山登りをすること自体が目的になってしまうと頑張っている感じはしても、本来の目標は達成することはできません。
いくら戦術(手段)がすばらしくても、戦略(目的)が間違えていたら、いつまでたっても目標は達成できないのです。失敗企業は社員の働き方を一変させるITツールや社内制度を探し続けますが、そんなものはありません。
そんな失敗企業とは異なり、成功企業は目指すべき目標が明確です。目標を社内外で公表し、達成につながることは何かを見極め、そこから導き出した行動を繰り返す習慣が〝身についている〟のです。そのため、目標の達成につながらないムダな行動は一切しません。時間を生むには、やめることを決めなければならないのです。
習慣づけるには、意義=腹落ち感が重要
前述のテレワーク・デイズでいうと、成果が芳しくなかった原因は、その目的が働く人たちにしっかり伝わっていなかったからではないでしょうか。テレワーク・デイズは自分にとって何のメリットがあるのかを〝腹落ち〟しないと、いつもの行動習慣を変えようとはしません。オフィスにおける消灯の習慣がなかなか浸透せず、ともすれば近くのカフェで〝隠れ残業〟する社員がいるのは「腹落ち」していないからなのです。
テレワーク・デイズに参加することの意義がわかっていないと、各企業も真剣に取り組まないでしょう。これは働き方改革を成功させる秘訣と一緒で「どうやってやるか?」の前に「なぜやらなくてはいけないのか?」をしっかり考えることが重要なのです。テレワークをどうやって浸透させるかではなく、なぜテレワークが浸透しないのかを考えるべきでしょう。