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「配置転換」が行なわれない会社への就職は慎重にすべき理由

2019.08.25

■連載/あるあるビジネス処方箋

 今回は、就職活動を「配置転換」を切り口に考えてみたい。この場合の「配置転換」は数年ごとに社員が担当する仕事を変えたり、他の部署へ異動にすることなどを意味する。もちろん、転勤やグループ会社に出向、転籍するケースも含む。

中堅企業(主に正社員数が500人以上)、大企業(主に正社員数が1000人以上)では、配置転換は頻繁に行われている。中小企業(主に正社員数が300人以下)では少ない。ここに人事マネジメントを考えるうえで根深い問題があるのだが、新聞や雑誌では大きく取り上げられることがまずない。

結論から言えば、配置転換が行われていない会社に、新卒時に就職することを私はお勧めしない。非常に多くの人が数年以内に退職する傾向があるからだ。今回は、就職活動や転職活動をする皆さんに私のこれまでの取材で得た考えを紹介したい。

 なぜ、配置転換がスムーズにできるのか。いくつかの理由や要因があるのだが、最も大きな理由は、各部署や個々の社員の仕事がある程度、平準化、標準化、規格化、マニュアル化されているためである。例えば、各部署では部員が参加する会議やミーティングがあり、情報が共有される。部の目標や進捗、各担当の現状、課題、問題点を知ることができる。これらは中堅、大企業では数十年前から行われている。その歴史の積み重ねで、社員が組織の一員として正しく動く文化が浸透している。

しかも、社員の定着率が中小企業に比べて総じて高いために、情報共有が深くなる。おのずと、会議やミーティングでの話し合いのレベルが高くなる傾向がある。こういう土台がきちんとできているから、配置転換が可能になる。

この態勢をさらに強化するのが、新卒採用だ。高卒、専門学校、大卒、大学院(修士)を毎年、一定数雇い続けると、定着率が中途採用者に比べ高いがゆえに、情報共有が進む。議論や話し合いのレベルが深くなる。これが相互理解を進め、信用関係をつくるきっかけとなっていく。仕事の進め方などをめぐり、納得感や満足感を高めることにもなる。中堅、大企業の社員の仕事への意識が相対的に高いのは、このような仕組みがあるからとも言える。

 配置転換には、社員たちの様ざまな思いがつきまとう。満足する人もいるのだろうが、不本意な部署へ異動になり、不満を抱え込む場合もあるのかもしれない。確かにそのようなケースはあるとは思う。私も会社員の頃を振り返り、理解に苦しむ異動になったこともある。だが、振り返ってみると、マイナスと思えるような場合でも、いつかは何らかの形でプラスになっていくものだ。

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