■連載/あるあるビジネス処方箋
大学生や大学院生、専門学校生などは就職活動の時期だろうから、今回も中小企業(この場合は、正社員数300人以下)のある意味での怖さについて紹介したい。新卒時に中小企業への就職は、慎重に考えたうえで決めるべきと私は考えている。就職し、苦しんでいる人を10代の頃から数多く見てきた。現時点でも、低賃金や長時間労働、指導力のない上司に悩む人は多い。数年で辞める人は絶えない。だからこそ、繰り返し書いている。
来春、社会人になり、小さな会社の社員と仕事をすると、言葉に特徴があることに気がつくだろう。話し言葉やメールなどの書き言葉である。威圧的で攻撃的で、挑戦的なものが少なくないはずだ。
私の知る範囲では、例えば、メールで論争をしかけてきたり、電話で警察の取り調べのように追及口調になったりすることがある。信じられぬことに、20代で社長のような発言をする社員もいる。
中堅企業(正社員数500∼1000人)、大企業(正社員数1000人以上)の社員にも同じような言葉を発する人はいるが、中小企業と比べるとはるかに少ない。今回は、中小企業の社員の言葉はなぜ、攻撃的になるのか、を考えたい。
1、自分を思い知る機会が少ない
必要以上に自信を持ち、相手を侮っているから、攻撃的になるのだ。実際のところ、彼らは中堅企業、大企業の同世代の社員と比べ、仕事力は相対的に低い。私の実感値では、3∼5ランクは下に位置する。率直に言えば、中堅企業、大企業では様々な意味で通用しない人材である可能性が高い。さすがに新卒時に一流の大企業の内定を断り、中小企業に入る人はおそらく過去50年で数えるほどしかいないはずだ。
この人たちはなぜ、自分をかいかぶるのだろうか。力を正確に知る機会に乏しいからだと私は見ている。例えば、社員数が少なく、同世代で競い合う相手がほとんどいない。昇格をめぐり、し烈な競争があるとは言い難い。離職率が高いために、実際はほとんどの人が管理職になる。役員になるのも難しくはない。しかも、人事異動は中堅・大企業に比べると非常に少ない。私が知る編集者で、社員数100人以下の会社に勤務する人は10年間で人事異動の経験がまったくない場合のほうが多い。これでは、自分の力はまずわからない。
人事評価のあり方にも難がある。考課者である上司(通常、管理職)の評価スキルは概して低い。そんな教育訓練を受けていない。ほとんどの人が管理職になるのだから、教育訓練は不要なのかもしれない。人事評価の基準も極めてあいまいで、ガイドラインすらない場合もある。それで、まともな査定をするのは不可能のはずだ。これではほとんどの人が勘違いし、実際の力以上に高く評価するのではないだろうか。結果として、他人に根拠なき優越感を持ち、攻撃的になるのだと私は思う。