「無限」という言葉に抵抗
しかし、社内の評価は高くなかった。「売れるのか?」と疑問が呈され、商品化に難色が示されたほど。それに、ネーミングについても「無限」という言葉が議論になった。無限に食べられるわけではないのに「無限」と謳うことに抵抗があったからだ。
しかし、営業部門は商品性を評価する。プレゼンしたところ、「商品名はともかく美味しい」という声を多くもらうことができた。
ある程度の手応えを得ることができたことから、澤田さんは商品性やネーミングに懸念を示す社員に対し、無限レシピに関する各社の取り組みをまとめて紹介。同時に、全女性社員を対象に無限レシピを知っているかどうかに関するアンケート調査を実施し、その結果も提示した。アンケートでは、無限レシピを知っていたのは7割近くいることが判明。実際につくったことがある人も3割近くいることがわかった。
「これだけ知っている人がいてホッとした」と当時の心境を明かす澤田さん。知っていてもつくったことがある人が少ないことについては、そのことを逆手に取り、簡単に無限レシピがつくれるものの必要性を訴える材料として生かし、商品化への理解を得た。
発売1か月で販売休止に
『パリパリ無限』シリーズは発売後、予想以上に高い反響を得た。報道発表した以外、とくに何もしなかったが、発売から1か月で半年分の計画を達成してしまうほど急激に売れる。急激に売れたことで生産体制の立て直しが不可欠になったことから、4月から九州・沖縄以外では販売休止とした。
販売休止後も毎日のように、同社には「どこで売っているのか?」「通信販売していないのか?」といった問い合わせが寄せられた。九州で売っていることを聞き、わざわざバイクを走らせて買いに行った山口に住む熱烈なユーザーもいたそうだ。
全国販売を再開したのは2018年8月。九州・沖縄以外で〈パリパリ無限キャベツのもと〉の1食入りを発売し、その後〈パリパリ無限もやしのもと〉の1食入りを投入する。それまで全国発売だった2食入りは九州・沖縄に限定した。
現在は九州と沖縄でのみ販売されている〈パリパリ無限キャベツのもと〉と〈パリパリ無限もやしのもと〉の2食入り
全国販売再開後、以前と違い、商品のクチコミがSNSで拡散した。多くのユーザーがTwitterやInstagramに画像付きで投稿。確認できているだけで、画像付きの投稿が軽く6000件近くあるという。テキストだけの投稿を含めると、確認しきれないほどだ。「当社のチルド食品で、このようなことが起こったことはありませんでした。画像付きの投稿だけで毎週100件は確認しています」と澤田さんは明かす。
今後も4品体制を維持
2019年2月に、めんたいマヨ風味の〈パリパリ無限だいこんのもと〉とガーリック&オニオン味の〈パリパリ無限レタスのもと〉を追加したのは、春夏向けに2品追加し4品体制にしたいという考えからだった。今後は秋冬向けに季節の野菜を使ったものと入れ替えて4品体制を維持する考え。使う野菜は、カットされたものが提供されているか、揚げ麺と絡みやすいか、調理に手間がかからないか、などといった点から、検討していく。
ユーザーはレシピ通りにつくるほか、独自にアレンジするケースも多い。例えば〈パリパリ無限もやしのもと〉を使う場合、茹でたもやしと絡めるのではなく、炒めたもやしと絡めるといった具合だ。ヘビーユーザーになればなるほど、全種類まとめ買いし様々な野菜と組み合わせて楽しんでみたり、トッピングを楽しんでみる人が多い。「今後はブランドサイト上で『トッピング総選挙』のようなこともしてみたいです」と澤田さんは話す。