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社員数100人以下、創業15年以上の会社が抱えるリアルな問題

2019.06.30

2、上司のレベルも著しく低い

 この人たちの上司(管理職や役員)のレベルも著しく低い。プレイヤーとしてはともかく、マネジメント力には難があまりにも多い。部下を限りなく、野放しに近い状態にしているように私には見える。例えば、部署の仕事を個々の社員に任せ、最低限度のことは確かにレクチャーしているようだ。しかし、それは「育成」とは言わない。「担当を決めた」のでしかない。

 本来、「本当の仕事力」を身につけさせるならば、そこから先に踏み込んでいくべきである。例えば、1日にせめて数回は、仕事の現状などを個々の担当者から聞き出し、その都度、何らかの指示をしないといけない。叱るのではなく、理解させ、次に生かすように誘うのである。ここでチェックを入れないから、伸び悩むのだ。PDCAサイクルをしつこいほどに回さないと、仕事力は強くはならない。だからこそ、大企業の多くの職場では報告、連絡、相談が密に行われている。

 ところが、このレベルの会社の上司は部下育成の術を心得ていない。わずか経験が数年しかない社員にも、その仕事の「責任者」としてすべてを任せている。私には「無責任極まりない丸投げ」にしか見えないが、これが「部下育成」なのだという。にわかに信じがたいが、私が接する20代の編集者は、「編集長(通常は課長級)」のような権限を与えられている。これは、一流の新聞社や出版社ではまずありえない。

 だから、このレベルの会社の20∼30代の社員は自分を明らかにかいかぶっている傾向がある。新卒入社の数は少なく、しかも定着率は概して低い。ライバルはほとんどおらず、上司のレベルは極端に低い。自分を高く評価しすぎになるのは無理もない。

 今年冬にも驚き、言葉を失ったのだが、20代の担当者は中小企業をテーマにした取材経験が一切ない。正しい認識がほぼまったくないのに、その記事について批評をしてくる。その指摘に強い疑問を感じたので、こちらから質問をしていくとやはり、要領を得ない。なぜか、社員数1000人レベルの会社の取り組みを語り始める。もはや、話し合いはできないと私は思った。中小企業と大企業の区別が全然できていないのだ。たった数年の経験で、「自分ができる」と思い込むのが常識的には誤りなのだが、結局はそのレベルの人材なのだろう。

 こういう会社では上司が事実上、不在であるがゆえに、誤りやミスを指摘する人がほとんどいない。従って、同じミスをしつこく繰り返す。いつまでも、進歩がない。この状態が続くと、「常に自分が正しい」という考えに凝り固まる。もともと、コミュニケーション力に難があるだけに、一層にひどい状況になる。

 大企業や中堅企業の社員と30歳前後の時点で比べると、仕事力の差は言葉を失うほどに大きい。社員数100人以下で、創業15年以上の会社ではPDCAサイクルがほとんど回っていないから、仕方がないのかもしれない。もはや、会社とは言い難い一面があるのだ。

 就職活動の時期だからこそ、私はこういう会社の内情を伝えておきたい。新卒ならば、まずは大企業や中堅企業に迷わず、エントリーするべきである。いざ入れば何らかの問題があり、失望するのかもしれない。しかし、その失意は小さな会社に入ったときよりもはるかにささいなものであるはずだ。一部の無責任なメディアや識者に感化されることなく、前に進んでほしい。

文/吉田典史

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