働き方改革によって求められる社員の生産性向上。あらゆる施策が各社で行われているが、今回はそんな中でも3社が実施しているオフィスドリンクをはじめとした飲食関連の施策を紹介する。
1.三菱地所株式会社 紅茶を社員に無料配布
(写真左)三菱地所株式会社 人事部 給与・厚生 働き方改革推進担当 根神 剛さん
三菱地所は、これまで執務スペースレイアウトの改革や仮眠室の設置など、社員の生産性向上のための施策に力を入れてきた。
そしてこのたび、紅茶の生産性への影響に着目し、2019年3月からの一定期間、社員共有スペースで無糖紅茶のペットボトル飲料を無料配布。自律神経測定器も設置し、希望する社員に一定期間、就業中に紅茶を飲用させ、飲用前後の心拍数を測定することで自律神経への影響を検証した。
精神科医で特定非営利活動法人日本ブレインヘルス協会理事長の古賀良彦杏林大学名誉教授の研究では、オフィスで常飲されるコーヒーや紅茶などの飲料のうち、紅茶が仕事をする際に重要なワーキングメモリー(※)の能力発揮に最も寄与するという結果が出ている。これにより、紅茶の生産性との相関関係が示唆されている。
※ある仕事をこなす上で、脳にたくわえられた記憶の中から必要なものを的確に素早く選び出し、判断や行動の遂行に役立てる能力。
三菱地所の担当者に、今回の紅茶無料配布の結果を尋ねたところ、次のように回答があった。
「仕事中に飲むものはコーヒーと決めている社員も多いと思いますが、今回の取り組みによって、紅茶という新たな選択肢を増やすきっかけにつながったと思います。紅茶によるリラックス効果を感じながら、業務に取り組むことができた、という社員の声も寄せられています」
2.株式会社ドリコム 社内カフェスペース
ソーシャルゲームの開発・提供を行うドリコムには、渋谷にあるカフェ「ON THE CORNER」がプロデュースする「D ON THE CORNER」というカフェがオフィス内に併設されており、社員は福利厚生価格で利用できる。
注目なのはプロのバリスタ常駐で、本格的なコーヒーを楽しめる点。カフェにはゲーム機も設置されており、社員のくつろぎ空間となっている。
ドリコムのIR室の担当者は次のようにコメントする。
●目的は?
「街の雰囲気の良いカフェで仕事をしていると能率が上がる、という社員の経験に着想を得て、ならば社内にそういう空間を作ってしまおうと現在のオフィスへの移転時にオープンしました。弊社代表の内藤もカフェで仕事をするのが好きで、社内にいながら気軽にパソコンを開いて仕事ができる環境を社員に提供したいという強い想いから、内藤自らすべての調度品の調達や内装デザインに関与しました。
弊社はインターネット領域における『ものづくり企業』を標榜しており、世の中にない独創的なサービスを産み出すことを常に考えています。堅苦しさから解放され、おいしいコーヒーを飲みながら息抜きをし、自分に合った自由なスタイルで仕事をすることで、新たな発明につながるアイディアが産まれやすくなるのではないか、と考えています。
そうした発明を促す取り組みという一面に加え、息抜きのできる空間を会社の目立つ場所に整備することで、社員に就業中の息抜きを促すという目的もあります」
●生産性向上に役立っている?
「社員にアンケートをとりますと、当初の狙い通り、能率が上がると評判です。自身のデスクを離れ一日中カフェで仕事している社員もいます。調度品や内装デザイン、提携カフェは居心地の良さを重要視して選んだこともあり、その居心地の良さが生産性向上に大きく寄与しているのではないかと思っています」
●どんな利用が多い?
「就業中の息抜きが最も多く、次いで仕事、ミーティングとなります。社外の方からはカジュアルな雰囲気の中、本格的なコーヒーを楽しみながらミーティングできると大変好評です。また、セミナーの会場として利用することもあります」
●ゲーム機を設置しているのはなぜ?
「リラックスし、気分転換できるスペースにしたいとの理由から、ゲーム機や漫画、ボードゲームを設置し、就業中に息抜きができるようにしています。また、最新の人気ゲームをプレイすることで、ゲーム開発・運営者の視点ではなく、ユーザーの視点に立つことができ、ユーザーにより面白いゲームを届けることに役立っているとも思っています」