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働き方改革が進められる中、働く人それぞれに合った働き方の形が求められている。なかでも座席を固定しない「フリーアドレス」は目立った施策だ。しかし、社内で完全フリーアドレス制を敷くと、失敗に陥ることが多いという。
株式会社リンクアンドモチベーションの代表取締役会長 小笹芳央さんに、その理由や成功のポイントを聞いた。
完全フリーアドレスが必ず失敗する理由
小笹さんは、試験的に自社で完全フリーアドレス制を実施し失敗した経験があるという。
フリーアドレスとは、働く場所(アドレス)を自由(フリー)にする施策であり、つまり「社内のどこのデスクで仕事をしてもいいという働き方改革」である。
小笹さんは著書「モチベーション・ドリブン」の中で、かつて試験的に総務や経理、法務などが所属する管理本部でフリーアドレスをやってみたことがあったそうだが、組織が大混乱し、10日で中止となったと述べている。
上司に相談したくてもどこにいるかがわからない。上司も部下に直接伝えたいことがあってもどこにいるかわからない。メールを送っても四六時中見ているわけではないので、なかなか返信が来ない。しょうがないので社内を歩き回って探すことになる。このように、非常に無駄な時間を費やすことに…。
この失敗の原因として「組織図がなくなったこと」を挙げている。組織図は、組織の「コミュニケーションチャネル図」であることから、それが崩れることで、組織が組織としての体を成さなくなったというのだ。
成功するフリーアドレスは「デザインアドレス」
この失敗の原因を踏まえ、小笹さんは「デザインアドレス」を提案する。
「組織図を無視した完全フリーアドレスが成功している企業は数少ないと思います。成功している企業は、弊社でも取り入れている、“グループ単位の席は決め、その中で自由に座席を選べる『デザインアドレス(グループアドレス)』”がほとんどだと思います。コミュニケーションチャネルである組織図を無視した施策は、失敗する可能性が高いです」
例えば、総務部エリア、人事部エリアを作って、そのエリア内をフリーアドレスにする、というのがデザインアドレスだ。
フリーアドレスを「デザインアドレス」にするメリット
リンクアンドモチベーションでは、次の図のようにデザインアドレスを実施しているという。
部署の座席範囲を約50名単位だけ固定し、その中で自由に席を選べる制度だ。
このデザインアドレスであれば先のような大混乱は起きない。むしろ、3つのメリットが得られるという。
1.コミュニケーションの活性化
毎日、別の人と話す機会が増える。
2.ペーパレス
固定席を設けないので、紙が減る。
3.レイアウト変更が容易
固定席を設けていないので、荷物も少なくレイアウト変更もしやすい。
中でもレイアウト変更のしやすさは、意外とメリットが大きいようだ。実際、今年4月に人材開発N(図のオレンジ部分)と、人材開発G(図の黄色部分)を入れ替えるレイアウト変更をしたところ、移動自体は半日で終わったという。