■連載/あるあるビジネス処方箋
私が取材を通じて見聞きする管理職、役員や社長、あるいは取引先である出版社や広告代理店の編集者の中に、パワハラを繰り返す人がいる。観察をしていると、性格や気質が実によく似ているのだ。この場合のパワハラとは退職強要やセクハラ、執拗ないじめ、激しい叱責をはじめ、部下や同僚、取引先を意図的にバカにしたり、けなしたり、否定したりすることも意味する。
ほぼ全員が、極端に「自己愛」が強い。つまりは、一線を越え、「危険水域」に入ったナルシストである。今回は彼らがなぜ、そのようになるのかを考えたい。まず、この人たちの「自己愛」がどのようなものであるかを私の観察で述べたい。読者諸氏の職場にもいないだろうか。
・自分の意見や考えがいかなる時も、絶対に正しいと真剣に信じ込んでいる。
・過ちがあった時に、様々な理由をつけて、結局、お詫びをしない。いかなる理由があろうとも、かたくなに認めようとしない。
・いよいよ認めざるを得ない場合は、事実をわい曲したり、損害や被害を過少にして報告したり、責任転嫁をする。つまりは、認めない。
・たった数年の経験で、一人前と本気で思い込み、常に自分を相手よりも優位な立場に置こうとする。「優位か、劣る」か、という基準でしか、相手を見ることができない。
・競争では、ルールを逸脱しようとも、勝たないと気がすまない。勝つところにしか、自分の身を置くことができない。負けそうなところに長くいることができない。
・不正や不当な行為をしても、自分中心の態勢をつくろうとする。
・他人を、特に身近な人、たとえば、部下や同僚、取引先を認め、称えたり、ほめることはまずしない。むしろ、アラやミスを探し、それを針小棒大に騒ぐ。そして、自分を優位に置く。
・こんなことを繰り返し、相手を怒らせると、いつかは孤立し、何かのはずみで排除されることをイメージできない。対人関係での想像力が完ぺきなほどにない。
・しつこいほどにパワハラを繰り返し、自分の考えや意見、立場、メンツを必死に守ろうとする。それが周囲に見えているのに、気がつかない。
・自分と部下や同僚、取引先との間に「共存共栄」の関係をつくる発想や意識がなく、優位に立つことしか考えていない可能性が相当に高い。さらには「勝つか、負けるか」の妙な競争を一人でしている。