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悲しみも喜びも、ゆっくりと受け止めていく、オランウータンに学ぶ生き方

2019.04.20

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動物のことを知りたい。大好きな動物園の様々な生き物は、どのように飼われているのだろうか。日々、動物に接する動物園の飼育員さんに、じっくりとお話を聞くこの連載。動物園の動物の逸話を教えてもらおうというわけである。

今年開園60周年を迎えた東京都日野市の多摩動物公園。上野動物園の約4倍という木々に囲まれた園内は文字通り自然公園である。そんな中で柵を極力使わない展示は、野生に近い動物の姿を目にすることができる。

シリーズ11回はボルネオオランウータン(以下・オランウータン)である。オランウータンは大型霊長類の中で唯一、アジアに生息する動物。体長はオスが約1m、メスが約80㎝。全身は赤褐色や褐色の長くて粗い体毛に覆われる。オランウータンとはマレー語で森の人という意味だ。東南アジアの熱帯雨林に単独で生活する。

飼育員の野村星矢さん(27)は、2017年からオランウータンの飼育を担当。オランウータンたちは頭が良いので各個体の意思を尊重し、ゆっくりと接する飼育を心がけている。子供の自立は6〜7才。それまで母親は子供につきってきりで面倒をみる。子供の自立まで母親の発情はなく、出産の間隔は哺乳類で最長である。

ロキの誕生

賢いキキが、二頭目となる次男のロキを出産したのは、昨年6月末でした。

出産が近いことはわかっていましたが、朝出勤したら、キキの獣舎が血だらけで。キキは布を被り背中を向け動かない。すぐに獣医に連絡をして、心配しながらしばらく様子を見ていると、僕たちの方を向いたキキは小脇に赤ちゃんを抱えていた。

キキの次男のロキは発育が芳しくなく、僕ら飼育員は心配しています。母乳を吸う回数が少なく体も小さいので、昨年の秋から補助的にミルクを与えていて。キキは赤ちゃんを抱いて近づいてくれるので、格子越しにロキに哺乳瓶でミルクを飲ませています。通常は4ヶ月ほどではえる歯も成長が遅く、ようやく出産から161目に前歯が出てきて。徐々に食べ物から栄養が取れるようになりました。

ロキの出産を目撃し学習したリキ(6才)は、母親のキキと暮らしていますが、赤ちゃんの誕生でリキへの母親の態度が変化した。以前は優しいお母さんでしたが、今はリキがロキのエサを取ると、ギヤっと叱りつける。キキの怒り方がきつくなり、リキが母親の寝室から離れる日が近いと感じています。

おバカキャラのリキと、地面が嫌いなバレンタイン

いつもハンモッグで寝ているリキは、よく言えば無邪気、悪く言えばおバカキャラで。横浜ズーラシアから来たメスのバレンタインに近づき噛まれ出血した。痛い目にあったらふつうは近づかないのに、懲りずに近づき2、3回噛まれて。バレンタインが根負けして、リキとはじゃれて遊ぶ仲良しになりました。

86年生まれのバレンタインは、イギリスの動物園で人の手で育てられため、これまで出産を2度経験しましたが、子育てができませんでした。多摩動物公園には国内で飼育されているオランータンの約3分の1の9頭が飼育されています。子育て中の個体を間近で見て学習することができる。そのために16年12月に来園しました。

野生のオランウータンは樹上で生活しますが、バレンタインは大の苦手にしているのが地面。野外の放飼場に出られるようになったある日、高いヤグラに登ったのはいいのですが、嫌いな地面に降りることができなくなってしまい、一晩中野外にいた。翌朝、何とか室内に戻ってきましたが、「バレンタインは泣いていた。初めてオランウータンの涙を見た。頑張って戻ってきたんだね」と、先輩はしみじみと言っていました。

バレンタインは3月下旬に横浜ズーラシアに戻りましたが、子供を産み子育てしてくれたら、多摩に来たことが成功につながったと僕らも嬉しいです。

(公財)東京動物園協会

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