メスに噛みつくチャッピー、好奇心旺盛なキキ
ジュリーをいじめたチャッピーは、気が強いオランウータンです。飼育員にはビジネスライクで、エサが欲しい時はアヒル口をしてアピールし、噛みつくことはありませんが、他のメスには噛みつく。だから他のメスと一緒に展示場や放飼場には出せません。
でも、チャッピーは繁殖に関しては優秀で、これまで5頭の健康なオランウータンを出産しています。
ちなみに、オランウータンの子供が自立するのは6〜7才で、それまで母親はつきっきりで子供の面倒を見ます。子供が自立するまで母親は発情することなく、出産から次の妊娠までの期間は哺乳類で最も長い。チャッピーも5頭目の子供のアピ(4才)と、寝室で一緒に暮らしいて、展示場でもアピと一緒です。
好奇心が強くて頭がいいオランウータンですが、中でも特にめざといのはキキです。スカイウォークといって、展示施設の高い場所にロープを渡して、木々の茂った別の運動場に行ける屋外施設があって。キキはそこから持ち込んだ長い枝を使い、室内の展示場の蛍光灯を壊すいたずらをしたことがあります。
「その長い枝をちょうだい」いたずらされると困るので、展示場の中に長い枝を見つけた時はそれを指差す。キキは長い枝を持ってきますが、交換条件でエサをちょうだいと。ドングリを与えると殻をきれいに口で割り実を食べ、次が欲しいと殻をこちらに渡します。
オランウータンのエサはキャベツ、小松菜、リンゴがメイン。園内のシラカシ等の葉も食べます。1日に1回、ヨーグルトを与えるのですが、展示場の扉のすき間からヨーグルトを与えていた時、キキにつかまれ展示場の中に引きずり込まれそうになったことがある。オランウータンの握力が200kg以上ありますから。
アルバイトの飼育員は作業中に、キキに靴を取られて。その時はエサと交換に返してもらった。これらは全部、キキのいたずらです。
キキは12年に初産で生まれたオスのリキと、一緒の寝室で暮らしていますが、妊娠して昨年6月に次男のロキを出産しました。またこのロキが――
ロキのこと、長男のリキ、横浜ズーラシアから来たバレンタインとチェリア、オスのボルネオとキュー、そして伝説のオウンウータン・ジプシーの逸話は後編で。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama