チーターは兄弟仲がいい
各個体に感情移入はしませんが、それぞれのチーターの個性はある程度、把握しています。ネコみたいにゴロゴロと喉を鳴らす個体や、餌がほしい時にキャンキャンと甘えたような声で鳴くチーター。
中でも驚かされたのは、担当して1年目に生まれたキングチーターです。出産時のモニターの画像には5頭のうち、1頭だけ真っ黒い赤ちゃんがいる。母親がなめても真っ黒のままで、「本当になめているのかな」「大丈夫かな……」と。
「これ、キングチーターじゃないか」と、声をあげたのは係長でした。キングチーターは劣勢遺伝子の組み合わせで誕生するのですが、背中にタテジマがあって、左右の黒い点が他のチーターに比べて大きい。国内での誕生は多摩動物公園がはじめてでした。
現在までに多摩で生まれたキングチーターは全部で4頭。3頭は他の動物園に移されて、今はイブキというオスが飼育されている。このイブキが用心深い性格なんです。運動場から獣舎に戻る時になかなか入ろうとしない。野生で目立つキングチーターは、他と比べてより慎重なのでしょうか。
ライオンは兄弟同士でケンカをすることもありますが、兄弟仲がいいのもチーターの特徴です。メス同士を一緒にすると優劣ができて、発情しないと言われるので別々にしますが、オスの兄弟はずっと一緒です。用心深いキングチーターのイブキも、同時に生まれたシュレンと同部屋で生活し、運動場に放す時も2頭一緒です。
交尾の時も2頭が連携しているというか、富士サファリパークから来たオスの兄弟のナガトとムツもいつも一緒ですがある時、まず、メスの発情を感知したナガトが、盛んに鳴いてアピールした。そこでメスを運動場に出すと、今度はムツがうまくメスのシュパーブをエスコートし、交尾を済まして。こうしてシュパーブは17年2月に3頭の赤ちゃんを出産しました。
昨年はナガトとジュパーブの姉妹のデュラも、ペアリングに成功して18年10月31日にデュラは5頭の赤ちゃんを出産しました。群馬サファリパークから来たデュラは、性格も警戒心もこれまで飼育したメスの中では一番強かった。格子越しにバーンと跳びかかってくることもありました。そんなデュラが初産を経験して。
何が出てきたんだ!?1頭目を生んだ瞬間、オロオロするデュラの姿がモニターに映し出されていました。でもすぐに生まれたばかりの赤ちゃんをなめて、授乳をはじめていた。
誰に教えられたわけでもないのに、母親は子供を育てはじめる。こんなにすごいことはないなーと。
お転婆娘が母親になる瞬間を目にすることができるのも、飼育員ならではの醍醐味ですね。
動物園の赤ちゃん秘蔵ショットを公開!
多摩動物園ではアニメでも人気のサーバルの赤ちゃんを1月17日(木)より公開中!
誕生日 平成30年11月28日
撮影日 平成30年12月11日
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama