小田急電鉄(以下、小田急)7000形LSEが2018年10月13日に“「ラストラン」という名の大一番”を迎えた。その続きをお伝えしよう。
参考
小田急電鉄7000形LSEラストランに密着!最後の花道はサプライズの連続だった
往路の快走を堪能したあとは
小田原の引上線に止まると、多くの乗客が4・8号車のトイレへ向かい、長蛇の列。車内イベントや昼食で動ける状況にないこともあったと思うが、乗客の多くは7000形LSE最後の走りを堪能したかったのだろう。以前、私が乗客として、別の鉄道事業者のツアーに参加した際、運転停車中にトイレへ向かう乗客が多かった。“特別な1日”は、7000形LSEの走りをじっくり味わいたいのだ。
“休憩時間”では、車内放送アナウンス体験を1号車にて再開する。
○フリー&台本(江ノ島線沿線在住の男性)
「1号車から11号車までのお客様、アナウンス体験に挑戦した2号車の乗客です。
わたくしは江ノ島線の沿線に住んでいるんですけど、今でこそ、専門的なロマンスカーがたくさん江ノ島線の沿線に入って来るんですけど、昔は30000形のEXEが中心で、展望席がついているロマンスカーは、とても特別なものです。思い出深い車両です。
今回のツアーに挑戦して、また、この体験にも参加してもらって、とてもありがたいです。また、このあと、ロマンスカーの車内放送も、読ませていただきたいと思います。
本日は、小田急特急ロマンスカーを御利用くださいまして、ありがとうございます。特急ロマンスカー〈あしがら37号〉箱根湯本行きです。途中停車駅は、町田、小田原です。町田には17時01分、小田原には17時39分、終点箱根湯本には、17時55分に到着いたします。
車内の御案内をいたします。座席を向かい合せにする際には、座席の背もたれを前に倒してから完全に変わるまで、まわしてください。化粧室とお手洗いは、4号車と8号車にございます。
公衆電話は3号車と9号車にございます。トンネルの中だと、一部使用できない箇所がありますので、あらかじめ御了承ください。
御用のお客様は、車掌がまいりますので、お知らせください」
松村車掌によると、特急ロマンスカー〈あしがら37号〉箱根湯本行きの台本は、約30年前(1988年頃)に使われていたという。当時は磁気式プリペイドカードの全盛期で、特急車両を中心にテレホンカード式公衆電話の設置が進められていた。
「列車」と「車両」
1・11号車では、当選者が運転台の見学を行なう。列車は鉄道営業法により、乗客の乗務員室入室が禁止されているが、それを可能にしたのはなぜか?(参考までに、車内放送アナウンス体験に当選した乗客は、車掌室の外で放送)
小田原到着前、広報が取材陣に解説した。
「今は“列車”なので、(引上線に)入ったら“車両”になります」
「ああ」(一同うなずく)
「“車両ならできる”ということです。営業線ですと、運転台は(鉄道営業法)で入れないということで」
鉄道に関心のない方にとっては、「列車と車両は同じじゃないの?」と思うだろう。実は鉄道業界にとって、「列車」と「車両」の意味が大きく異なる。
駅と駅のあいだを走行する列車。
「列車」というのは、駅、信号所、操車場といった停車場の外を運転する車両のこと(ただし、路面電車といった軌道は除く)。例えば、駅と駅のあいだを走行する車両は、すべて「列車」である。
車両基地にたたずむ車両。
一方、「車両」というのは、停車場外を運転する目的がない車両をさす。
例えば、車両基地や駅構内の留置線、引上線などに止まっている車両は、すべて「車両」である。
「特急ロマンスカー・LSE(7000形)さよならツアー」の場合、下りの新宿―小田原―引上線間、上りの引上線―小田原―秦野間は「列車」、引上線停車中は「車両」なのだ。
展望車つき特急ロマンスカーの運転席は、車内に設置されたハシゴを使う。
年季が入った運転席。定員は3人。
さて、7000形LSEの運転台は展望席の上にあり、まるで秘密基地のようなつくりだ。当選者ははしごを登り、覗き込むように見学する。運転席では珍しい“座椅子”で、運転士は足をのばすのが大変そうだ。