昨年末、大手メーカーに勤務する20代後半の男性の会社員から、このようなメールをもらった。「最近、入社同期の友人が退職しました。新卒の頃から希望していた外資系金融機関に転職をするそうです。なぜか、自分だけ取り残された気分です」と。
その男性は、2010年春に大学を卒業し大手メーカーに就職した。だが、第1志望の会社ではなかったという。それ以降、後悔を抱えながらもそのメーカーで働いている。そして昨年秋、同期入社の友人が外資系金融機関に転職したことをきっかけに、焦り始めたというのだ。このまま、今の会社に在籍し続けていいのかと。
実は、私も20代?30代前半に似たような思いをした経験があるので、この人の心理状態はある程度察しがつく。読者の中にも、同じような思いを持っている人、あるいは経験をお持ちの方もいるだろう。そこで今回は、辞めていく同期が羨ましく思える時に、いかに自身の心をコントロールするかをテーマに、その処方箋を紹介したい。
■辞めていく同僚が羨ましく思えた時、自らに言い聞かせる5つのこと
1.「辞めること=成功」ではない
会社を辞めて本人が希望する会社に移ったところで、それで「成功した」とは言いきれない。その後、その会社に合わず、早々と辞めるかもしれない。上司や周囲から評価されるず、関連会社などに転籍させられるかもしれない。そのまま、やりたい仕事ができず、無念な思いで定年を迎えることもあるのだ。それに、その会社が経営難に陥り、リストラの対象になるかもしれない。もちろん、他社に吸収合併されることもあるだろう。現代は、世の中が激しく動いている。希望する会社に入ったところで、スムーズに進むとは限らない。そもそも、転職することは“手段”であり“目標”ではないのだから。
2.「残ること=敗北」ではない
同世代のライバルだと思っていた同僚が立派な会社に移り、不本意ながら自分が今の職場に残るとなると、たしかに焦る人も多いだろう。虚しくなることもある。私も会社員の頃、同期入社であまり仲のいいほうではなかった人間が、有名な海外の報道機関に転職した時、強い嫉妬心を持ったことがある。敗北感もあった。一時は、投げやりになって「こんな会社を辞めてやる」と辞表を出そうとさえ思った。だが「はたして今の会社に籍を置いて残ることが、本当に彼に負けたことになるのか」と言い聞かせた。それから十数年経つと、見えてくることがある。たとえ、会社に不満のまま残ったところで、決して「敗北」を意味するものではないということだ。
仮に、就職や転職に勝ち負けがあるのなら、「負け」は自分を見失い、安易な転職をしてキャリアダウンし、労働市場において自分の値打ちをどんどんと下げることを指す。あるいは、質の高い仕事をすることもなく、惰性で会社に残り続け、認められることなく、だらだらと日々を送ることだ。「自分はこう生きていく。そのために今の職場でこうする」といった明確な目的があった上で、会社に残るのなら、それは決して「負け」などではない。