「仕事をする前から、その人自身の考え方によって潰れていく社員が多い」
20年ほど前、当時70代の経営者が取材時に話していた言葉だ。この経営者は、終戦直後にわずか数人で会社を興し、1990年代初めには社員1200人の会社を経営するまで成功をおさめた人物だ。その経営者は、こんなことも話していた。
「個々の会社員の成績に大きな差はない。大きく差がつくようなら、大きな会社にはなりえない。会社はあくまで“チーム”で稼ぐもの。周囲の社員と差がついて昇格が遅れていくのは、どちらかというと自分で自らの可能性を閉じていく人で、つまりは自滅する人が多い」
この取材をしてから、そのように“自滅”してしまう人がどういう特徴を持っているいるのか、観察するようにしてきた。そして、それに該当する人たちが、よく口にする言葉があることに気づいた。今回は、それについて紹介したいと思う。ちなみに、1?3はまさに70代の経営者が指摘していたことである。
1.「だから、うちの会社は腐っているんだよ!」
同僚と話す時などに、会社への不満や問題点などをあえて聞き出し、「だから、うちの会社は腐っているんだ!」などと口にする。逆に、同僚が会社のいい部分を話した場合は聞き流す。敏感に反応するのは、会社への不満について。要は自分が会社に不満を持っているから、それに同調する人を探しているのだ。
不満が溜まっているのなら、辞めればよさそうなものなのだが、こういう人に限っていつまでも居座り続ける。場合によっては、同僚らが会社に不満を持って辞めるように仕向けようとする。そのうち、職場で自分が浮いた存在になっても、そのことに気がつかない。
類似語に「うちの会社じゃダメだよ」「うち会社ではムリだね」などがある。これらの言葉のどれもが、その言葉を発する本人が自らの不満を発散するためのものであり、こういう言葉を発したところで事態は打開されないし、状況も変わらない。それでも本人は“何かが変わる”と真剣に思い込んでいるのだ。
2.「俺は会社にぶら下がらない」
続いては「いつまでも会社員をするのではなく、早く辞めてしまえ!」という自分への呼びかけだ。とは言いつつも、なぜか、本人は辞めようとしない。それどころか上司らの顔色を窺いながら、高い人事評価を期待する。同世代の社員でいち早く昇格する者が現われると、猛烈に嫉妬する。そのような不満を抱え込んでいるから、他人に辞めるようにけしかけるのだろう。
会社員で、自らのブログなどに「会社にぶら下がるな!」と書き込んでいる人をネット上で見かける。そのブログの日記を過去に遡って読んでいくと、上司や同僚らに何らかの不満を感じているケースが多い。転職をしようとするものの、思い描いた会社になかなかいけないようだ。じつは、こういう心の渇きを感じている人が「もっと認めてほしい」という思いから発する叫びが、「会社にぶら下がるな!」なのである。だが、この言葉を発するほど、周囲の人の心が離れていく。類似語に「社畜になるな!」がある。