3.入社してからの「評価の蓄積」だということに気づかない
昇格が速いと遅い人の間で差がつくのは、入社した頃からの「人事評価の蓄積」によるものである。社員数が数百人以上の会社ならば、入社した頃から、上司の評価は通常、人事部に記録として何らかの形で残る。人事異動となり、次の部署へ移っても、それは残り続ける。高い評価を受けた人は、異動先でも大きな仕事を任せられる傾向がある。そこでも自ずと、高い評価を受ける傾向がある。役員になる人は、20代の頃からの評価が概ね高く、その積み重ねの点も高いはずだ。20?30代の一時期にスランプに陥ったこともあるかもしれないが、それを考慮したとしても、同世代では「評価の蓄積」はハイレベルのはず。40、50代で昇格が遅れる人は、この「評価の蓄積」を心得ていない。
4.会社員としての意識が甘い
出世競争で負けようとも、会社に残る以上、誠実に働く義務がある。悔しい思いはわからないでもないが、会社員としての当事者意識を持ち、懸命に仕事をするべきだろう。職場では、不満や愚痴は言わないことも大切だ。40、50代で昇格が遅れる人を観察していると、慰めてほしいと言わんばかりの人もいる。しかし、会社は利害関係が複雑な組織である。特に人事評価には誰もが何らかの思いを持つ。それを受け入れることができないのは、会社員としての当事者意識に乏しいからだ。
5.危機意識が乏しい
40、50代になり、昇格が遅れるということはかなりのピンチといえる。リストラされて、辞めざるを得なくなった時、次の会社を素早く見つけるのは容易ではない。少なくとも、20代後半までの人と比べて、はるかに厳しい転職活動になるだろう。家のローンや家族の養育費、老後の資金作りなどを考えると、さらに厳しい状況に追い込まれるかもしれない。60代の定年まで会社に残ることができたとしても、危機意識を持って相当頑張らないと、自らの処遇を改善することは難しいだろう。つまりは、同世代の出世コースにいる人のことを考えている余裕すらないのだ。そのくらい、危うい状況になっていることは理解するべきではないだろうか。心を入れ換え、ひたすらに仕事に取り組まないと、一段と苦しくなる。
今回の話は、30代前半までくらいの人からすると、縁のない「遠い話」かもしれない。しかし、昇格をめぐる競争で、いったん差がつくと、そう簡単に取り戻すことができないという現実は、今のうちから心得ておいたほうがいいだろう。私が知る、20代の会社員の中には、「出世だけがすべてではない」と口にする人もいる。それも1つの考え方とは思うが、同世代の中でも昇格の速さで上位20%くらいに入っていないと、その後、会社に残っても、何かと苦労することは理解しておくべきではないだろうか。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)など、多数。
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