なぜ、デザインを大幅に変える必要があったのか? その理由を、デザインを担当した商品開発部デザイングループ 課長代理の西田剛史氏は、「なめらかな書き味を実現したことを、ボディでも体現することにしたため」と説明する。
三菱鉛筆(株)横浜研究開発センター課長・加藤友義氏(左)と商品開発部デザイングループ課長代理・西田剛史氏(右)。
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2013年度のグッドデザイン賞を受賞したデザインの最大の特徴は、軸の形状が一筆書きのようになめらかな「ワンモーションデザイン」であること。グリップと軸で異なる素材を使用していても、段差をなくし色目を合わせることでつなぎ目を目立たなくした。「こうした形状にすることで、なめらかさを表現している」と西田氏。
また、段差をなくしたのは見た目を美しくするだけではなく、どこを握っても指のフィット感が良好になることを目指したためでもあった。さらに、グリップは軸の先端ギリギリまで設けられているが、これは、先端を握って使う人に対応したもので、先端を握ってもしっかり持てるようにした結果だった。
もう一つの大きな特徴が、クリップと一体化したノック棒の採用である。これは、クリップとノック棒が分かれている従来のノック式ボールペンに対するユーザーの潜在的な不満を解消する目的から発案された。不満とは、ポケットやノートの表紙にペンを挿したとき、ノック棒が飛び出して収まりがよくないこと。この不満を解消するため、ノック棒から直接、クリップを生やすことにした。
現在のデザインに行き着くまでに考えたデザインは、ラフスケッチも含めて50ほど。「ボールペンの新規デザインとしては多い方」(西田氏)だという。ノック棒のディテールや全体のスタイリングで、設計部門などと様々な検討を重ねたほか、デザイン案を絞り込む段階では社外モニターにも評価を依頼。書き味とともに評価してもらった。