一方、チップでは、エッジレスチップを開発した。エッジレスチップとは、先端の角をなくしたチップ。紙面への引っ掛かりを抑える効果があり、ペンを寝かせて書くような場合でも引っ掛かりが気にならない。ペンを使い込んでいくうちにエッジが削れ、書き味がなめらかになることから発想された。
チップの拡大模型。従来のチップ(左)とエッジレスチップ(右)の違いは一目瞭然。
一見すると簡単そうに見えるが、これまで実現しなかったのは、高い加工精度が要求されたからであった。「昔から、エッジをなくしたい、と考えていましたが、そのためには、ボールとボールを受けるホルダーのクリアランスをミクロン単位で仕上げなければなりませんでした」と加藤氏。
チップの製造では専用加工機と専用工具を用い、何十工程もかけて金属を削ってつくられる。加工精度を高めるため、同社は工作機械メーカーや機械工具メーカーに依頼し、高精度な加工できる機械と工具を仕立てもらい、開発を進めた。
しかし、開発はエッジをなくして終わり、というわけではなかった。インクに合うよう、改良を重ねた。インクの改良に合わせて、インクの出る量や書き味が最適になるよう、クリアランスや寸法を細かく見直していった。こうした作業に時間を費やし、インクとエッジレスチップが完成するのに2年近くの時間を要することになった。
この一方で、『ユニボール シグノ RT1』はデザインも見直した。『ユニボール シグノ RT』とは大幅に変わっている。
『ユニボール シグノ RT』。