上司から「ちょっといいか、話があるんだが」と言われ、2人だけで話をすることになった時、戸惑う人も多いだろう。私も会社員の頃、何度かそういう時があった。厳しく叱られたり、あるいは、人事異動を告げられたり、様々な結果が待っていた。読者の中にも、上司と1対1の話し合いを苦手としている人はいるのではないだろうか。今回は、そうやって上司が2人だけの話し合いを求めてくる時の主な理由を、私が取材などで知り得たことをもとに分析してみた。
1.他の部下たちへの配慮
上司が部下を会議室などに呼び出して2人だけになり、叱ることがある。数年前、社員が5人しかいない不動産会社の社長はこんな説明をしていた。「部下を褒める時は、みんながいるところがいい。だが、叱る時は、人目を避けたほうがいい。厳しい口調になる場合は、なおさらだ。たとえ、入社して数年しか経っていない新人であろうとも、プライドを持っているから」
さらに、「特に相手が女性の場合は、1対1になった時に叱るべきだ。みんながいるところは避けたほうがいい」と強調していた。理由は、「女性の中には感情的になる人がいて、その後の人間関係が悪くなる場合がある」のだという。当初、私はこの、男性と女性の部下の、叱り方を分けるという考え方がわからなかった。だが、少なくとも叱る時は、みんながいるところは避けたほうがいいという考えはもっともだと思う。
2.自分の身を守りたい時
例えば、部下が突然、「辞めたい」と言ってきた時、あるいは、致命的とも思えるようなミスをした時などは、上司は部下と2人だけの場で話をしようとすることがある。その理由の1つが「防衛本能」だ。心理学者を取材した時、こんなことを教えてくれた。
「人の上に立つ人は、自分の身やプライド、メンツなどを守りたい、という気持ちが大きくなる。これは、大多数の人が持っているものであり、もし下の人が逆らったりすると、この本能を刺激し、結果的に怒らせることにつながる」
たしかに、会社員の頃を思い起こしても、たしかに当てはまる気がする。おそらく、上司としては、部下と2人だけで話し合うことで、自分の威信や立場、自尊心を守りたいという気持ちがあるのだろう。だとしたら、それを心に秘めて上司と接するべきだ。