3.言葉の真意や背景をつかむことができない
「2」と一部重複するが、メールのレスポンスが極端に速い人は、実際に会って話す時、こちらの意味合いを素早く的確につかむことができない場合がある。ようは、そもそも理解力が低いのだ。経験が浅いことがあるのかもしれないが、ビジネスシーンでは、可能な限り、相手の言葉の真意や背景を想像しながら、対話ができるようになるべきだ。
それができないと、深い意思疎通は難しいし、場合によっては相手に不快感を与えることにもなる。相手が上司なら「こいつはわかっていないな」と思うだろう。機会あるごとに、「この人はなぜ、こんなことを言っているのか?」「どうして、こういう質問をしてきたのか?」と考えること。それだけでも、いずれは言葉の真意や背景をある程度は汲み取ることができるようになっていくはずだ。
4.「仕事ができる」印象も崩れる
メールのレスポンスが極端に速い人は、周囲の社員には「あの人は仕事ができる!早い!」といった印象を与えることができる。好印象を与えることで、大きな仕事や活躍できる仕事を与えてもらえるチャンスが増えてくる。その意味では、レスポンスが速いことはいいことであり、否定するべきではない。研修などでもそう指導されることが多いはずだ。しかし、1?3までのことが何度も繰り返されると、「何だ、速いだけか……結局、仕事になっていないじゃないか」と思われるだろう。そのあたりまで含めて考えたい。
今回のコラムを読んだ方の中には「本当にそんな人がいるのか?」と思われる方もいるだろう。だが、これは私が実際に経験したことであり、しかもそれが1人だけではなく、それなりの企業に勤務している人たちに見られたこと。だからこそ、残念に感じるのだ。
ここ10数年、IT技術の普及などによって、仕事のスピードが重視されるようになっている。メールに限らず、あらゆる仕事のテンポが上がっている。そうなると当然、スピードとは別に「仕事の質」も高かめていかなければならない。いくら、デジタルのスキルがあっても、仕事の基本ができていなければ無意味であることを意識してほしい。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)も好評発売中。