絶賛されている会社のフリーアドレス制度。大企業も導入していることから、大いに話題になった。しかし、実は落とし穴もあるといわれる。フリーアドレスに詳しい株式会社内田洋行に落とし穴と解決策を聞いた。
フリーアドレスとは
オフィスに自分の専用デスクがなく、出社すると自由に座席を選んで着席し、業務を行うフリーアドレス。リモートワークやノートパソコン持参による業務が増える中、自分のデスクやデスクトップ型パソコンがなくとも問題ないように思える。実際Yahoo! JAPAN、カルビーなど大企業が導入している。
フリーアドレスのメリットは、社内コミュニケーションを活性化すること、整理整頓の徹底、などがあると一般的にいわれている。
フリーアドレスのよくある課題
しかし、フリーアドレスは大絶賛されているものの、いくつかデメリットがあるといわれている。そこで一般に懸念されるデメリットについて、オフィスに詳しく働き方変革のコンサルも行っている、株式会社内田洋行の知的生産性研究所所長 平山信彦氏に解決策を教えてもらった。
【よくあるフリーアドレスの課題】
●議論したい組と、作業に集中したい組が同居できない
●座る席が決まってしまい、結局は固定席化してしまう
●会社への帰属意識が薄れる
●仕事へのモチベーションが下がる
●経理などフリーアドレスはそもそも不向きな職種もある
【解決策】
●議論したい組と、作業に集中したい組が同居できない
「この場合、フリーアドレス席とは別に気軽に利用できるミーティングスペースを設けるのが良い方法です。フリーアドレス席での会話はちょっとした相談など短いものにとどめ、込み入った話や長い議論はミーティングスペースを使用するといった運用ルールを定めておきます。また不必要な大声で話さない、といったマナーを守る、皆でそのような雰囲気をつくることも大切です」
●座る席が決まってしまい、結局は固定席化してしまう
「固定席化を防ぐには、マネージャやリーダーが率先して座る場所を変えることがポイントです。さらに、私たちは『アクティブコモンズ』と呼んでいますが、さまざまな種類の席、例えば集中しやすい席、仲間と一緒に仕事ができる席、短時間気軽に使える止まり木のような席などを用意し、その時々の業務内容や気分によって選べるようするのも固定席化を避ける有効な方法です。また、前提として社員皆が、とにかく身軽になることもポイント。持ち運びしやすいPC、紙文書は使わずペーパーレスにするなどして、私物を置く、デスククリーンをせずに帰宅するなどのマーキングを厳禁にします」
●会社への帰属意識が薄れる
「そもそもフリーアドレスにした程度で帰属意識が薄れるということは、それ以前の問題、つまり動機づけ機会の欠如やマネジメント不全などが懸念されます。まさに働き方変革による風土革新が必要です
働き方の面からの対策としては、会社や部署の動きがわかる情報発信・共有を行う、ミーティングや会議の場を活用して目標に対する意識合わせを行う、マネージャが意識的に声がけをするといったことがあります」
●仕事へのモチベーションが下がる
「フリーアドレスを導入する際に社員の納得を得ることが重要です。また社員にとってメリットが感じられるフリーアドレスの仕様・運用にすること。固定席よりも便利で快適でなければなりません。放任型マネジメントにならないようにマネージャがちょっとした会話や状況確認などのストロークを行うのもポイントです」
●経理などフリーアドレスはそもそも不向きな職種もある
「無理に一律に導入しないこと。不向きと思われる職種に導入する場合はトライアルを行い、ボトルネックを明らかにし解決する必要があります。またグループアドレス、つまりチームの島は決めておき、その中で席は自由にするなど運用方法を工夫することも一つの方法です」