コンビニの店舗作りを通して学んだこと
品川区内の店舗の店長を1年弱やりまして、支店でアシスタントSVを半年間経験すると、今度はスーパーバイザー(以下・SV)として配属されました。SVはおよそ9店舗のFC店を担当し、損益計算書やバランスシート等のデータに基づき、店の状況を分析し、いろんなアドバイスをして、店の売上げと利益が伸びるよう指導するのが仕事です。
僕が担当を引き継いだ東京の下町のある店舗は、オーナーさんが体調を崩し店に出られなくなって店長も辞めてしまい、若いクルーが必死に店を回していた。オーナーが店に入れないので人件費がかさみ、苦しい経営が続いている。別のオーナーさんへの交代が決まっていて、それまでの間、なんとか持ちこたえようと僕がある程度、店長業務をこなしていました。
そんなある日、クルーが足りない時間帯にネットで募集し、僕と同じ歳ぐらいの男性を採用した。その彼が将来的に独立したい考えを持っていたんです。そこでこの店の事情を話し、「店長業務に挑戦してみませんか」と提案したら、本人もやってみたいと。そこで、これまで僕が経験した店長業務を教え込みました。
発注、品揃えの決め方、周りの競合店を調べ、自分の店の強みと弱みを意識して、本部のデータから客層を考えて。
「競合店と比べ棚の本数はうちが多いけど、駅からの導線は競合店のほうが有利だね」
「競合店を越えて、うちにお客さんが来る何かが必要ですね」店長代理と、そんな話し合いを重ねて。
「近くの酒屋は夕方には閉まる。そこからが勝負だ。酒の棚を3本から4本にして種類を増やそう。酒のつまみ類や、からあげクン等のファストフードも増やそうじゃないか」そんな提案が功を奏したんです。
売上げがアップした。すると、みんな一丸となってやっていこうと、店の雰囲気も良くなる。お客さんとクルーとのコミュニケーションが、密な下町の店舗ですから。クリスマスケーキの販売の時は、高校生クルーと店長代理が頑張り、店の向かいの新聞販売店の人たちとも、仲良くなって買ってもらって。地域の100店の中で第1位に輝いたんですよ。
コンビニの店舗作りを通して、日本とアジアの国々とのより良い関係作りに貢献したい。そんな入社当時の目標に、近づけそうな今の部署に異動したのは1年ほど前でした。担当はタイ、フィリピン、インドネシア、ハワイ。コンビニエンスストアはこれからの地域です。
インフラが整っていないし、日本のマニュアルは通用しない。ファストフードはあらかじめ揚げる時間を決めておこうとか、レジカウンターの下のレジ袋の位置とか、レジ内の紙幣はグチャグチャにせず、きちんと分けようとか。各国共通で教えられる教科書的なツールを作っているところです。現地のパートナー企業と一緒に発展していこうと。
ところで高校時代から関心がある中国ですが、ローソンはすでに1700店舗以上進出している。中国は顔認証や無人店舗、携帯のバーコードを使っての支払い等、新しい形が次々に生まれています。あの国は一党独裁の体制ですから、やろうと思ったことはすぐに法整備が進む。
次の小売の画期的なスタイルは、中国から生まれると僕は思っています。そんなシーンに立ち会ってみたい。ようやく自分の思いを現実的に語れるようになってきました。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama