■連載/あるあるビジネス処方箋【職場で総スカンになる30代社員の特徴】
私の同世代である40代後半~50代前半には、出版社では役員や局長、部長、編集長などがいる。数日前も、ある役員と食事をした際、30歳前後の男性社員の話題となった。
この男性は、先輩や上司などから反感を買い、総スカンとなり、営業部へと異動となったという。この男性に限らないが、30代前半までくらいに軌道を外れ、同世代の社員と比べると、昇進・昇格が遅れる社員は得てして「敵」が多い。嫌われ者も少なくない。
今回は、このタイプはなぜ、嫌われるかを私の取材をもとに考えたい。
■攻撃的な物言いで反感を招く
相手に対し、警察の取り調べのような追及口調になったり、高圧的な物言いになったりする。同僚や後輩、取引先などにまず、攻撃的になる。その後、自分が厳しく叱られないことを察知すると、エスカレートする。先輩や上司にも同じような尊大な態度をとる。その態度からは、「こんなことも知らないのか」「どうだ!俺はこの仕事をきちんとできるんだぞ」と言わんばかりだ。
私が観察していると、この人たちは自分を「そこそこ優秀」と思い込んでいるようだ。だが、同世代のほかの社員と比べるとそうとは思えない。「そこそこ優秀」というよりは、「普通のレベル」でしかない。
そもそも、社員数が数百人以上の会社の場合、採用、配置転換、評価、育成などの人事の仕掛けは、社員間の力や能力に大きな差がつかないことを意図してつくられている。自称「そこそこ優秀」な人よりも、「普通のレベル」の社員を多数そろえ、教育訓練をしたほうがはるかに強い組織になる。
社員間の力が大きな差になると、定期の配置転換はできない。全社員を対象にした大規模な異動は、まずできない。むしろ、安定的に業績を維持し、成長していくためには社員間の力を「わずかな差」にしておいたほうがいい。「わずかな差」でないと、長きにわたり、社員の競争意識を駆り立てることはできない。大規模な異動も配転もできない。戦後、日本の企業が大きく飛躍した理由の1つが、この「わずかな差」だった。今も、多くの中小・ベンチャー・大企業はこの「わずかな差」を踏まえたうえでの「成果主義」を導入している。
攻撃的な物言いをする人たちは、会社のこのからくりを見抜くことができていない。だから、真剣に自分は「そこそこ優秀」と信じ込む。そして、他人が自分よりも何かの部分で見劣りするところで優越感を感じ、攻撃的な物言いになる。そんなことをすると、自分が損をすることをわかっていない。