老舗2社のこだわりを知る~カクキュー編~
ところで、なぜこれほどまでに老舗2社は伝統にこだわるのか。文字や画像ではわからない部分を知るべく訪ねると、まず案内されたのが巨大な木桶が並ぶ蔵の中だった。酒蔵などで見かけるタンクとは明らかに異なる重厚感が感じられる。
「ここでは6尺(直径1.8m)の木桶に6トンの味噌を仕込み、3トンの石を円錐状に積み天然醸造で二夏二冬(2年以上)熟成させています」
とは、カクキュー広報担当で管理栄養士の近藤ちかこさん。木桶は大正時代に造られたものが多く、長年の間に蔵の菌が付き、味噌の味に影響を与えている。上に石を載せているのは、そのままだと木桶上部の味噌が乾燥するため、重石により下にたまっている水分を循環させる役割があるそうだ。
石はそのほとんどが西側を流れる矢作川上流の自然石。今は法律により採取できないため、昔からあるものだけを使う。中には300年以上前のものもあり、円錐状にしっかり積み上げるには5~10年の経験が必要という。
このようなこだわりがあるからこそ、カクキューならではの八丁味噌ができる。
老舗2社のこだわり~まるや編~
まるやも蔵の中に入ると、カクキューと同じ光景が広がる。案内してくれた、まるやの広報担当、石原友保さんによると、
「ウチもカクキューさんも基本的な造り方は同じです。料理人の方々からは、カクキューさんの味は特長が強く、味に角がある。ウチのは丸いとよく言われます。この違いは蔵癖と呼ばれる、そこに住んでいる菌の影響だと思われます」
一度に6トンもの量を仕込み、長い時間をかけて造るため味にブレが出にくいのも特長だという。そして、
「八丁味噌は見た目が濃いものの、塩分は10~11%弱。一般的な米味噌より低いくらいです。そして水分を極力控え、天然醸造で最低2年以上熟成させる。だから煮込んでも風味が飛びにくい。しょっぱさより旨味を感じるのが特徴です」
伝統製法の大切さを説く。